生物多様性【技術士キーワード学習】

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生物多様性について

参考:生物多様性条約(METI/経済産業省)

 

生物多様性の背景

我々人類は、食品や医薬品など、生物を幅広く利用する事でその恩恵を享受してきたが、その一方で、近年では生態系の破壊などの影響で、生物種の大幅な減少に対する懸念が深刻化してきている。

1992年に開催されたリオ地球サミットにて、生物多様性条約が採択されており、生物資源を持続可能な形で利用していくための国際的な枠組みが制定されている。

 

生物多様性の、求められる姿

生物多様性条約では、以下の三点を目的としている。

  1. 生物の多様性の保全
  2. 生物資源の持続可能な利用
  3. 遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分

 

生物多様性についての問題点と課題

多面的な観点から、生物多様性の問題点3つ

参考:生物多様性国家戦略(閣議決定予定版) (biodic.go.jp)

 

我が国では、生物多様性の危機をもたらす原因として、以下の4点が指摘されている。

  1. 開発など、人間活動による危機
  2. 自然に対する働きかけの縮小による危機
  3. 人間により持ち込まれたものによる危機
  4. 地球環境の変化による危機

このうち、地球環境の変化による危機は直接人間に対しても影響があることから、1~3点についてのみ取り上げ、記述する。

 

開発など、人間活動による危機

開発など、人間が引き起こす負の影響要因による生物多様性への影響の事である。
沿岸部の埋め立てなどの開発、森林の多用途への転用など土地利用の変化によって生息・生育環境を破壊し、生物多様性に大きな影響を与えている。

 

背景には戦後の高度成長期があり、工業製品の出荷額が1955年時点で48兆円であったのに対し、1995年には481兆円と、10倍に拡大し、生産性向上のために急速に開発を進めていることや、宅地面積の拡大のための開発があり、自然生態系を大きく改変する恐れがある行為に対して、事前に検討する事が必要である。

 

自然に対する働きかけの縮小による危機

里山里地の薪炭林や農用林などの里山林、採草地などの二次草原は、以前は経済活動に必要なものとして維持されており、その環境に特有の多様な生物をはぐくんできた。

しかし産業構造や資源利用の変化、人口減少や高齢化などによる活力の低下に伴い、里山里地の手入れが縮小する事による危機が拡大している。

 

背景には産業別人口の変化があり、第一次産業の従事者が、戦後しばらくは50%弱であったのに対し、2010年には約4%と、大幅に減少していることがあり、現在の社会経済状況の下で、里山里地の自然的・社会的特性に応じた、効率的な保全、管理手法の検討が必要である。

 

人間により持ち込まれたものによる危機

野生動物の本来の移動能力を超えて、人によって別の地域から持ち込まれたことにより、固有値が多く生息している地域において外来種による生態系の破壊が起きている。

 

背景として戦後50年間で急速に進んだ社会のグローバル化による物の出入りの急増により意図的/非意図的を問わず外来種の導入が進んだことが考えられる。

 

最重要課題

我が国では製造業が盛んであり、この発展に伴い生物多様性に影響が出ていることから、「開発など、人間活動による危機」を最重要課題と考える。

 

最重要課題の解決方法

Microsoft Word – 生物多様性国家戦略(閣議決定予定版) (biodic.go.jp)

 

生物多様性に関する理解と行動

生物多様性に配慮した社会システムやライフスタイルへの転換を図る、「生物多様性の主流化」に取り組む。具体的には、クールビズや節電行動などの地球温暖化への対策と同じように、社会で一般的に取り組む課題としての認知を広げるが、技術的には再生可能エネルギーの活用など、石油など化学物質の使用を抑制する事で貢献する。

 

生態系サービスでつながる「自然共生圏」の認識

川の同じ流域の上流で森林が適切に管理されていることによって下流も含めて森林の有する土砂の流出を防止できることや、水源を安定的にすることなど、豊かな自然を有する地方が主な供給源になり、都会が無意識で享受している環境を見直し、都市に存在する資金や人材、情報を地方に提供し、支えあう仕組みである「自然共生圏」として連携していくことが必要である。

技術的にはIoTと5G通信技術の組み合わせにより森林保全にかかわる業務をリモートで行うことで貢献する。

 

科学的知見の充実

全国レベルでの生物多様性に関する情報について、現在継続して行われている調査を今後も実施し続け、各地域の博物館などで、生物多様性の基礎的なデータとして生物標本や文献などの資料を蓄積する。

国、地方自治体、研究機関、博物館、NGOやNPO、専門家などが保有している情報をお互いに使いやすい形で共有し、国の施策に取り組む。

技術的には、各組織におけるデータベースをクラウド上に保管し、アクセス・加工しやすくする。

 

解決策による波及効果と懸念事項

解決策による波及効果

資源や情報の共有、ほかの活動と組み合わせた活動につなげることで、我々国民が主体的に生態系を考慮した技術開発を行うことができる。

 

解決策により新たに生じる懸念事項

生物多様性についての行動を我が国単独での活動、ルールとすることで、他国と比較した経済的合理性が取れず、製造業の国際競争力に影響する可能性がある。

 

懸念事項の対策

他国との足並みを揃えるために、積極的に情報共有を行う。生物多様性条約締結国際会議棟で我が国がリーダーシップを取り、情報を発信する。2010年のCOP10では、我が国の環境大臣が議長を務め、世界各地から180の締結国と関係国際機関、NGOなどが参加する、過去最大の締約国会議となっている。

 

将来展望について

2022年に行われたCOP27では、気候と生物多様性は同じ見方でとらえる必要があると宣言しており、今後も気候変動の対策と併せて実施されることが予想される。

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