エネルギー安全保障について【技術士キーワード学習】

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エネルギー安全保障について

参考:世界と日本の「エネルギー安全保障」の変化をくらべてみよう|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

 

エネルギー安全保障とは

エネルギー安全保障とは、エネルギーが安定的に、かつ廉価な価格で供給される状態を達成するための取組である。

 

エネルギー安全保障の数値評価

我が国では、エネルギー安全保障を数値的に評価する方法として、7つの評価項目を使用している。

 

一次エネルギー自給率

石炭、石油、天然ガス、水力、太陽光、風力、原子力など、自然から採取されたままのエネルギーを国内でどのくらい賄っているかを、自給率として評価している。

 

エネルギー輸入先多様化

国際情勢の変化に対応するために、エネルギーの輸入先を複数確保しているかを評価している。

 

エネルギー源多様化

あるエネルギーが、国際情勢の変化によって供給不足に陥った場合に、ほかのエネルギー源で対応する事ができるかどうかを評価している。

 

電力の安定供給

停電時間の長さなどから、自国内で電力がどれだけ安定して供給されているかを評価している。

 

チョークポイントリスクの低減

エネルギーを輸入するにあたり、チョークポイントをどのくらい利用しているかを評価している。チョークポイントとは、ホルムズ海峡やマラッカ海峡、スエズ運河など、海上水路における重要なポイントの事を指す。

 

エネルギー消費のGDP原単位

GDP(国内総生産)あたりのエネルギー消費量を計算し、エネルギーの利用効率を評価している。

 

供給途絶への対応力

エネルギーの備蓄量など、エネルギーの供給が途絶えても対応できる力があるかどうかを評価している。

 

エネルギー安全保障の背景

昨今では、ロシアのウクライナ侵攻や急激な円高などにより石油価格が高騰しており、エネルギー資源の多くを輸入に頼っているわが国ではこれら価格の高騰により産業や日常生活に影響し、それが国家の安全と関係するため、エネルギー安全保障が必要となっている。

 

エネルギー安全保障の、求められる姿

我が国では、原子力と再生可能エネルギーを合わせた一次エネルギーの自給率30%を目指している。

参考:20211022_03.pdf (meti.go.jp)

 

  • 再生可能エネルギー:22-23%程度
  • 原子力:9-10%程度

 

エネルギー安全保障についての問題点と課題

多面的な観点から、エネルギー安全保障の問題点3つ

再生可能エネルギーの普及

太陽光・風力・地熱・水力などを組み合わせた再生可能エネルギーを普及させる事で電源の脱炭素化とグリーン水素の生成を行い、一次エネルギーの化石燃料への依存度を低減する。

 

原子力発電の再稼働

新基準に適合し、安全の確認が取れた原子力発電を再稼働する事で長期間安定して電力供給ができるベース電源を確保し、発電の化石燃料への依存度を低減する。

 

省エネルギー対応

トップランナー制度の基準を満たしている高効率な機器や家電に買い替えることで、生活や事業に必要な電力量を低減し、エネルギー使用を節約する。

 

最重要課題

我が国の一時エネルギー自給率は、東日本大震災が起こる前の2010年時点で20%あったが、再稼働されず稼働停止したままの原子力発電設備が多いことから、2022年は8%となっている。2030年のエネルギーミックスでは原子力発電を9-10%まで回復し、全体のエネルギー自給率を30%まで拡大する事を目標としていることから、「原子力発電の再稼働」を最重要課題と考える。

 

最重要課題の解決方法

参考:もっと知りたい!エネルギー基本計画⑦ 原子力発電(1)再稼働に向けた安全性のさらなる向上と革新炉の研究開発|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

 

世界で最も厳しい水準の新規制基準

2011年に起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故に対する教訓から、2012年に独立性の高い原子力規制委員会を設置し、更にIAEA(国際原子力機関)や諸外国の規制基準を考慮に入れて、世界で最も厳しい水準の新規制基準を2013年に策定している。

 

高速炉の開発

ビルゲイツが会長を務めるTerraPower社では、高速炉の開発が進められている。我が国で稼働していた「もんじゅ」の建設・運転で培った日本のノウハウに着目し、原子力研究開発機構(JAEA)と三菱重工等と協力に向けた取り決めを結び、今後日米協力を含め世界の高速炉開発の進展に期待されている。

 

革新炉の開発

地震や津波などの自然災害へのレジリエンス向上や、航空機の衝突・テロ対策などの安全対策、出力を変動させて自然エネルギーの変動を補う機能の向上を追求した革新炉の開発が現在進められている。さらに、2011年の教訓を生かして事故時に電源を失った場合でも原子炉を自然に冷やすことができるシステムや、炉心が溶融したとしても放射性物質を発電所敷地内にとどめることができる設計を取り入れている。

 

解決策による波及効果と懸念事項

解決策による波及効果

安全の確認された原子力発電所を新規開発、再稼働する事で、我が国の一時エネルギー自給率を向上させることができる。

 

解決策により新たに生じる懸念事項

原子力発電の普及に伴い、放射性廃棄物処理の仕方が課題となる。方法として海洋底処分、氷床処分、宇宙処分、地層処分が考えられるが、海洋底処分はロンドン条約により禁止、氷床処分は南極条約により禁止、宇宙処分は発射技術の信頼性により現状困難なため、地層処理が現実的な選択肢となっている。

 

懸念事項の対策

地層処分では、高レベル放射性廃棄物をガラス固溶体にし、ステンレスでできた容器に閉じ込める(オーバーパック)。その後ベントナイトと呼ばれる粘土質の緩衝材を多い、岩盤に閉じ込める事で、1000年かけて放射能を減衰させる。

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