メタネーションについて【技術士キーワード学習】
メタネーションについて
メタネーションとは
水素とCO2を化学反応させ、都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術の事である。合成メタンは燃焼時にCO2を排出するが、製造時の原料として、排気ガスなどから回収したCO2を使うため、実質的に大気中のCO2は増加しない。
メタネーションに用いる原料水素を再エネから製造すれば、合成メタンはカーボンニュートラルなエネルギーとみることができる。
合成メタンは既存の都市ガスインフラを用いて輸送が可能であるため、都市ガスを合成メタンに置き換えることによって経済的にガスのCO2をネットゼロにすることができると期待されている。
CO2+4H2→CH4+2H2O
メタネーションの背景
エネルギーの脱炭素化では、化石燃料を電源とした電力部門の脱炭素化や、自動車の電動海外にも方法がある。我が国では消費エネルギーの6割が工場など産業部門における蒸気加熱、家庭や業務など民生部門における給湯や暖房といった熱需要が占めており、これらのエネルギーを脱炭素化する事が重要である。
メタネーションの、求められる姿
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略において、次世代熱エネルギー産業に位置付けられており、導入量と供給コストの目標が決められている。
2050年までに都市ガスの90%が合成メタンに置き換わった場合、年間8000万トンのCO2削減効果があるとされており、日本全体のCO2排出量の10%程度に相当するため、脱炭素化への効果が大きいと考えられている。
年間導入量の目標
2030年までの利用開始を目指し、2030年時点で、既存インフラへ合成メタンを1%注入(年間28万トン)
2050年時点で90%(年間2500万トン)を合成メタンに置き換える。残りの10%は水素直接利用、バイオガス、その他脱炭素化の手立てでカーボンニュートラル化する。
供給コストの目標
2050年時点で現在のLNG価格と同水準を目指す。
メタネーションについての問題点と課題
多面的な観点から、メタネーションの問題点3つ
CO2回収の方法
CO2回収の観点から、合成メタンの原料とするために、すでに大気中に存在しているCO2を回収する技術の開発が必要である。
H2のグリーン化
CO2排出量削減の観点から、メタネーションに使用する水素を大量に生成するために、大規模かつ高効率な再生可能エネルギーによる発電が必要である。
設備の大容量化
メタン合成の観点から、CO2とH2を合成してメタンを生成するための、大規模な設備の開発が必要である。
最重要課題
メタネーションにおける一番の肝はCO2の回収であり、CO2回収技術が優れていればH2生成をブルー水素で補うことも可能となるため、「CO2の回収方法」を最重要課題と考える。
最重要課題の解決方法
アミン吸収法および個体吸収法
アミン化合物が化学反応によってCO2を吸収する性質を利用した分離回収技術の事である。液体アミン吸収法ではCO2を回収するために120℃の熱が必要なため、60℃で回収できる個体吸収材方式の開発が進められている。
物理吸着法
CO2を分解・回収する技術 | COURSE50 | 一般社団法人 日本鉄鋼連盟
流体分子と吸着剤表面の間に働くファンデルワールス力によりCO2を選択的に吸着し、減圧操作によりそのCO2を高純度で回収する技術である。
膜分離法
CO2のみを選択して透過させ、その他の気体を通さない特殊な膜を使用して、CO2のみを鳩首する技術である。
解決策による波及効果と懸念事項
解決策による波及効果
CO2を回収する技術が開発されることで、発生するCO2を回収して合成メタンを作る材料とすることができる。またグリーン水素と組み合わせることで、カーボンニュートラルな燃料とすることができる。
また、火力発電によって発生した二酸化炭素を回収してメタネーション用の材料とすることもできるため、電源の脱炭素化に向けたブリッジテクノロジーとしても期待することができる。
解決策により新たに生じる懸念事項
現状では、再生可能エネルギーの発電量が不安定かつ低容量であるため、CO2を大量に回収した際に使用できるH2が不足することが懸念される。
懸念事項の対策
原子力発電由来のイエロー水素と組み合わせることで、カーボンニュートラルの状況を維持する。
原子力発電は現在新規制基準における再稼働及び建て替えが進められており、過去の経験を活かして自然災害や電源喪失時のレジリエンスを高めた小型モジュール炉の開発がされている。