新材料探索について【技術士キーワード学習】
新材料探索について
自動車のEV化や、ドローン型自動車の開発などの製造業の技術革新において、希少資源使用量の節約や、環境保護・人権保護や低コスト化・軽量化など、更なる技術開発が必要となっている。本論文では、マテリアルズインフォマティクス(以下MIと略す)による新材料探索について記述する。
新材料探索の、求められる姿
既存の材料技術に加えて、合金材料の原子や構造に関する情報を解析し、より軽量・安価で性能の優れた新材料を開発する。
新材料探索についての問題点と課題
多面的な観点から、新材料探索の問題点3つ
AIを用いた材料開発
技術の観点から、機械学習やAI分析を用いて過去の実績を分析し、帰納的に材料を選定する事で、材料の選択肢を増やす。
データの共有化
標準化の観点から、MIを実施するにあたり必要なデータベースと、そのデータの評価方法を統一する。
MIを活用できる人材の育成
人材の観点から、MI実施に必要な機械学習やAI分析の技術を活用できる人材の確保・育成を行う。
最重要課題
我が国は以前より材料技術の競争力を保持しているが、少子高齢化に伴う労働者人口の減少によって、技術の伝承が問題となっている。そこで、各技術者がそれぞれ持っている知識・経験を全体で共有する事で伝承をスムーズに進める事が必要であるため、「データの共有化」を最重要課題と考える。
最重要課題の解決方法
材料データベースの仕組み作り
データは量が多いほど精度が上がるため、実験装置をIoT化し、自動的にデータが収集される仕組みを作成する。出来上がったデータベースを複数の観点から分析するために、因子に関するデータベースも作成し、それぞれを連携して、加工しやすくする。
部署間、企業間で共有できるデータベースの作成
論文などで公になっているデータや、公的機関における研究データを統一データベース化し、企業間で最新の情報を共有する。各社の競争力につながるデータは社内で保管するが、これを部署の壁に拠らず参考にできるようにする。
現在、NIMS(物質・材料研究機構)とKEK(高エネルギー研究所)でのデータ共有化が進んでおり、国内ではこの2機関をベンチマークする。
データ分析にかかる時間の高速化
AI分析を行う際には膨大なデータを扱う必要があるため、それに対応したコンピュータと、高速大容量の5G通信設備を導入する。またAI分析に必要なデータをエッジコンピューティング技術により加工し、AIにかかる負荷を減らす。
解決策による波及効果と懸念事項
解決策による波及効果
データベースを共有し、分析にかかる時間を高速化する事で、材料開発にかかる工数を削減する事ができる。また、分析手法にかかわる技術を社内で共有する事で技術伝承がスムーズに行われ標準化されることで、少子高齢化により人口が減る中でも従来通りの開発技術を残すことができる。