ゼロエミッション火力【技術士キーワード学習】

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ゼロエミッション火力について

ゼロエミッション火力とは

温室効果ガスの排出をゼロにする火力発電のことである。現在では水素・アンモニアの活用、CO2の回収・再利用などの技術が提案されている。

 

ゼロエミッション火力登場の背景

日本における温室効果ガス排出量の内訳は、CO2の比率が極めて高く(約90%)、その多くは石炭や石油など化石燃料のエネルギー利用から発生しているめ、エネルギー問題とカーボンニュートラルの実現は、密接な関係にある。

一方、世界全体では、産業革命以降、二酸化炭素の地球温暖化に対する寄与率は76%程度となっている。

データで見る温室効果ガス排出量(日本) | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

 

温室効果ガスの種類

  • 二酸化炭素(CO2)…地球温暖化係数(GWP)=1
  • メタン(CH4) …地球温暖化係数(GWP)=25
  • 一酸化二窒素(N2O) …地球温暖化係数(GWP)=298
  • ハイドロフルオロカーボン類(HFCs) …地球温暖化係数(GWP)=1430
  • パーフルオロカーボン類(PFCs) …地球温暖化係数(GWP)=7390
  • 六フッ化硫黄(SF6) …地球温暖化係数(GWP)=22800
  • 三フッ化窒素(NF3) …地球温暖化係数(GWP)=17200

 

ゼロエミッション火力についての問題点と課題

多面的な観点から、ゼロエミッション火力の問題点3つ

 

脱炭素燃料の確保

燃料の観点から、ゼロエミッション火力には水素やアンモニアの活用が有力であるが、これらを生成する際のCO2を防ぐ必要がある。現在、水素は普及促進の技術開発の段階であるため、石炭や褐炭など化石燃料から作られるグレー水素を使う事が多く(生産されている水素の95%がグレー水素)、アンモニアは水素と窒素からハーバーボッシュ法で生成される事が多く、水素の生成を脱炭素化する必要がある。

 

発電時に排出されるCO2の回収

水素を天然ガスに混焼する場合やアンモニアを石炭に混焼する場合、依然として化石燃料を使用する事になるため、その過程で排出されたCO2を回収する技術の開発が必要である。

 

エネルギー創出のコスト

コストの観点から、上記二つの方法を普及させるためには、ゼロエミッション火力による発電コストが従来の発電コストよりも低く、収益性が良くなることが必要である。

 

最重要課題

現在、燃料の脱炭素化は火力発電以外にも燃料電池・給湯器や自動車のエンジン等においても応用が進んでおり、相互作用が期待できることから、「脱炭素燃料の確保」を最重要課題と考える。

 

最重要課題の解決方法

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/suiso_tukurikata.html

次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

 

再生可能エネルギー由来のグリーン水素の生成

a)太陽光・風力など、天候や時間帯によって発電量が変動する変動電源にて作られる電気が余剰になった際に、水の電気分解によって水素を生成してグリーン水素を得る。(下げ調整)

b)水素生成専門に再生可能エネルギーを活用して発電し、電力需要が大きい際に、調整用として電力を市場に供給する(上げ調整)

 

原子力発電由来のイエロー水素の生成

安全の確認が取れた原子力発電を再稼働、または新規稼働する事で電力を供給する。この電気を使用して、電気分解によって水素を得る。原子力発電は放射性廃棄物を排出するため、これらの処理方法を確立する必要がある。

 

天然ガスの改質とCO2回収技術を使ったブルー水素の生成

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccus.html

エネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

 

天然ガスやナフサなどの化石燃料を改質して水素を生成する。例えば現在主流であるSMR(Steam Methane Reforging)は、天然ガス(メタン)を原料に用いて、

CH4 + H2O → CO + 3H2

という化学反応で水素を得る。改質反応は吸熱反応であるため、800℃の温度が必要であり、通常は原料の一部をバーナーで燃焼して熱量を得る(CO2を排出する)。

反応で得たCOを水と反応させてH2とCO2に形を変えて、CO2をCCUまたはCCUSで回収してカーボンニュートラルとする。

石油や天然ガスの採掘時にCO2を圧入して、CO2に置き換え貯留する(CCS

回収されたCO2を別の形に再利用する(CCUS:カーボンリサイクル)

 

解決策による波及効果

解決策による波及効果

火力発電を水素またはアンモニアに置き換える事で温室効果ガスの排出を削減し、ゼロエミッションを達成する。またその水素やアンモニアを得るためにはグリーン水素またはイエロー水素を生成する事で、水素の精製工程での温室効果ガスの排出も削減できる。

現状は天然ガスを改質して水素を得る事が多く、ここではCO2を吸収する事でカーボンニュートラルとし、環境負荷を小さくすることができる。

 

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