旋削加工とは。旋盤との違い、加工条件の決め方などトータルで紹介
旋削加工について知りたい人向けの記事です。
旋削加工って言葉を聞いたことはありますか?
似た言葉で旋盤加工という言葉もあります。
加工を勉強すると、聞きなれない言葉がたくさん登場するので大変ですよね。
本記事では、旋削加工とは何か、旋削加工と旋盤加工の違いは何か、そして旋削加工の基礎について紹介します。
私は今後もものづくりの中で生きて、日本のものづくりを後世に残すために生きていく覚悟を持っています。
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<筆者も読んだ参考書籍の紹介>
旋盤の操作に関する基本的な内容が知れます。
先に旋盤の仕組みを知っておくことで後々加工条件を決めるときなどに、想像がつきやすくなります。
本書は図解が多いので、初心者の人にもとっつきやすいイメージを持てると思います。
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旋削加工とは。旋盤加工とは違う?
旋削加工は金属の加工方法の一つです。
回転している材料に工具を当てて、棒や筒など、丸い形状を作るために使用されます。
覚えておくといい事は、「工具は固定、工作物(ワーク)が回転している」ということです。
英語ではLatheとかTurningと言います。中国語では旋削加工を车加工(車加工)と言います。
そして旋削と旋盤の違いは、「旋削」という加工をする時に使う機械が「旋盤」です。
「旋盤加工」と聞いたら、「旋盤という機械で行う旋削加工の略なんだな」と理解したらOKです。
旋盤とは,円柱状の材料を回して,それにバイトと呼ばれる刃ものを当てて,材料を削る工作機械であり,機械加工で最もよく使われる工作機械の一つである
機械加工の基礎知識より引用
旋削加工で作られる身近なものの例として、ボルト、シャフトなどがあります。
さらに身近なもので例を挙げると、野球の木製バットも旋削加工で作られます。
旋削加工の反対語として、転削加工という言葉があります。
こちらは工具が回転して、固定したワークを削る方式です。フライス盤が代表です。
旋削加工の方法
旋削加工は回転しているワークに工具を押し当てて削ります。
- 外径旋削
- 内径旋削
- 端面中心の穴あけ
- 突っ切り
- ネジ切り
- 溝入れ
などなど、丸物加工には意外と色々な種類があります。
旋削加工で使うバイトの構造
旋削加工では工具が固定されているので、旋削加工で円筒に溝を入れたり、突っ切ったり、ネジを切ったりなどの加工をするために、工具(バイト)の形状を変えて色んな加工に対応しています。
旋削加工に使うバイトという工具の構造は、刃先と胴体(シャンク)からできています。
「刃物台」と呼ばれるバイトを取り付ける場所にシャンク部分を固定して、回転しているワークに押し当てて加工します。
旋削加工の種類
▼旋削加工の種類は以下の大きく5つに分けられます。
- 旋削加工の種類
- 外周加工
- 端面加工
- 穴あけ加工
- ねじ加工
- 総形加工
これらについて、少し解説します。
外周加工
画像はサンドビックHPより
外周加工とは、ワークの外周を削る旋削加工です。
外周加工の中にもまたいくつか種類がありますが、名前だけ覚えておけば良いです。
「そういうことができるんだー」くらいに思っておけば、他の人の話にもついていけるはずです。
▼使用工具:片刃バイト
- 外丸削り…ワークの外径を削って小さくする加工
- 段削り…外周に段差を付ける加工
- テーパ削り…外周を斜めに削って円すいを作る加工
- 曲面削り…外周を丸くする加工
▼仕様工具:突っ切りバイト
▼使用工具:ローレット工具
端面加工
端面加工とは、ワークの端面を削る旋削加工です。
▼使用工具:片刃バイト
端面削り…ワークのチャックしていない側の端面を平面に削る加工
正面削り…端面に段や溝を作る加工
面取り…加工ワークの角を落とす加工。
穴あけ加工
画像はサンドビックHPより
穴あけ加工は、ワークに穴をあける旋削加工です。
▼使用工具:ドリル
穴あけ…ドリルを使ってワーク端面の中心に穴をあける加工。心押台にドリルを取り付けます。(単純にドリル加工と言ったりもします)
▼使用工具:ボーリングバー(中ぐりバイト)
中ぐり:ワークに既にあいている穴をくり広げる加工。内径の仕上げ加工に使ったり、大直径の穴加工に使います。
ネジ加工
画像はサンドビックHPより
ネジ加工とは、ワークにネジの山と谷を作る旋削加工です。
▼使用工具:ねじ切りバイト
おねじ切り:ワークの外径におねじ(雄ねじ:ねじの軸の方、穴じゃない方)を作る加工
めねじ切り:ワークの内径にめねじ(雌ねじ:ねじの穴の方、軸じゃない方)を作る加工
総形加工
「総型工具」と呼ばれる工具を使って行う旋削加工です。
段取り替えなしで外周や正面に複雑な輪郭形状を加工する工具を「総型工具」とか「総型カッタ」とか「総型バイト」とか言います。
オーダーメイドなので、例えば加工時間を短縮したい!とか、加工が複雑すぎて難しい!とかあった場合に使用します。
以下の記事は、総型工具を使って溝の中にさらに谷がある形状と特殊なR形状がついた溝を総型工具で一発加工しています。
参考記事:(株)武井製作所~Blog~(https://takeiss.wordpress.com/tag/%E7%B7%8F%E5%9E%8B%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%88/)
旋削加工の工具(バイト、チップ)の選び方
旋削加工に使用する工具は、大きく分けて4つの事から総合的に判断して決めます。
- 機械
- ワークの形状と加工の向き
- 荒加工・仕上げ加工
- ワークの材質
それぞれについて、解説します。
機械から旋削バイトのサイズを決定
「切削加工をしよう」と決めると、まず最初に機械の制約を考えます。
- 持っている旋盤に取り付けられるバイトのサイズ
- 旋盤の切削性能
- 旋盤の精度
バイトのサイズは一般的には25x25mmですが、一般的なものじゃない場合は注意が必要です。旋盤に取り付けられるバイトのサイズを確認します。
次に旋盤の切削性能(剛性や馬力)を見て、高負荷の加工に耐えられるかどうかを判断します。
さらに、旋盤の精度(経年劣化でガタが来ているとか、安い旋盤のため精度が出づらい)を確認して、切り込み、送り、切削速度(ワークの回転数)の切削条件を決定します。
ワークの形状と加工の向きからバイトの型番とチップのタイプを決定
単純な棒材なら良いですが、一般的には段が付いてたり、テーパが付いてたりします。
加工の方向を確認すると、横に動く、縦に動く、斜めに動くなどがあります。
その方向を確認して、工具カタログから使用できるチップのサイズを決定します。
※バイトは一般的には右勝手(先端が左曲がり)をよく使いますが、たまに左勝手を使うことがあるので気を付けてください。
ここまででバイトの型番とチップのタイプが決まります。
荒加工・仕上げ加工の粗さからチップの型番を決定
旋削加工は、「荒加工」と「仕上げ加工」に2回に工程を分けて加工するのが一般的です。
これは加工にかかる時間を減らし、精度よく加工する工夫です。
- 荒加工:仕上げ加工より前に、ワークの余計な部分を荒く落とす
- 仕上げ加工:図面の要求に合うように、ゆっくり丁寧に削る
旋盤バイトのチップには「ノーズR」と呼ばれる丸みがあります。
◇形状の四隅の角が欠けないように、丸みを帯びてるんですね。
一般的には荒加工の時にノーズR:0.8mm、仕上げ加工でノーズR:0.4mmあたりで選定しますが、選び方には理由があります。
ノーズRの決め方
ノーズRが大きいと表面が荒くなりますが、切り込みを深くしたり、送りを早くしたりと、加工条件を上げられる利点があります。したがって荒加工では大きめのノーズRにして多めに削り、仕上げ加工では小さめのノーズRにして少なめに削ります。
ただし、ノーズRが大きければ大きいほどいいわけではなくて、ノーズRの2/3以上切り込めるかどうかで選びます。
ワークの材質から、チップの材質を決める
ワークの材質を鋼(P)、ステンレス鋼(M)、鋳鉄(K)の3分類で考えます。
チップに必要な耐熱性や強度などがワーク材質によって変わってくるので、加工しようとしているワークの材質がどれに当てはまるかで選びます。
材料と、荒加工仕上げ加工からチップの型番が決まります。
これで工具の選定が完了しました。
旋削加工に使うバイトの種類
旋削加工に使うバイトの種類について紹介します。
種類がたくさんあるので、代表的な6つを紹介します。
- 片刃バイト
- 剣バイト
- 突切りバイト
- 中ぐりバイト
- ねじ切りバイト
- ローレット工具
それぞれについて、詳しく紹介します。
片刃バイト
一番よく使うバイトです。
外径加工、端面加工など様々な場面で使います。
剣バイト
剣バイトの中にもまた真剣バイト、先丸剣バイト、斜剣バイトなど種類があります。
先端がとがっているので、曲面やテーパなどの複雑な形状を旋削加工する時に使います。
突切りバイト
名前の通り、「突っ切る」時に使う旋削バイトです。
中ぐりバイト
中をくり抜くためのバイトです。先にドリルで穴をあけておき、その穴をくり広げるみたいな使い方をします。
中ぐりバイト刃「ボーリングバー」とも呼ばれますが、ボーリングバーと呼ぶときは、専用機で使うもう少し大きいものを想像することがあります。
ねじ切りバイト
ねじのギザギザを加工するためのバイトです。ねじの斜め向きに合わせて送りを調節して、複数回に分けて加工をし、徐々にねじ山を深くしていきます。
ローレット工具
精密ドライバーの持ち手、マイクメータなどのつまみについている、滑り止めの形状を作るための工具です。
一般的な旋盤では転造加工(材料を削らず変形させる)のローレット工具を使いますが、主軸も工具軸も動く機械では切削のローレット加工もできます。
旋削加工に使うバイトのタイプ
切削加工に使うバイトには、種類のほかにもタイプがあります。
- スローアウェイバイト
- ロウ付けバイト
- ソリッドバイト
それぞれ特徴があるので、少し詳しく解説します。
スローアウェイバイト
スローアウェイバイトは、工具の先端に使い捨てのチップを使ったタイプのバイトです。
チップを「スローアウェイ」できるのでスローアウェイバイトと覚えておくと良いと思います。
チップの種類が複数ある(超硬、サーメット、ダイヤモンドなど)ので、加工ワークの材質に合わせてチップだけを交換して対応できます。
チップを入れ替える作業だけで工具交換が終わるので、量産時にもよく使われます。
付け刃バイト
シャンク(バイトの柄の部分)にチップをロウ付けしたバイトで、「ロウ付けバイト」とも呼ばれています。
ソリッドバイト
旋削加工の工具材料の「ハイス:高速度工具鋼」や「超硬合金」を削り出して作った、刃先とシャンクが一体になったバイトです。
刃先が摩耗したら研磨して再利用できるので、職人さんが好んで使っているイメージがあります。
旋削加工による切粉の種類
この章では、旋削加工で作られる切粉の種類について紹介します。
加工条件の良し悪しが作りだされる切粉によってある程度予想がつくので、切粉ばかり見ている技術者もよく見ました。
切粉の種類は大きく分けて4つあります。
- 流れ形
- せん断形
- むしれ形
- 亀裂形
流れ形が理想で、せん断形が許容範囲、むしれ形や亀裂形が出たら加工条件の調整を考えます。
流れ形
画像は「わかる!使える!機械加工入門(基礎知識)」より
流れ形の切粉は旋削加工で理想的な形です。
切削抵抗が一定で安定しているので、均一にきれいな加工面を得ることができます。
せん断形
画像は「わかる!使える!機械加工入門(基礎知識)」より
せん断形の切り切粉は、削った切粉が短く散る切粉です。
切り屑が繋がりにくい材料を削ると発生しやすいとされています。
切削力が一定ではないので、流れ形の切粉を出している時よりも仕上げ面が悪くなりますが、むしれ形や亀裂形よりは良好な仕上げ面になります。
むしれ形
画像は「わかる!使える!機械加工入門(基礎知識)」より
むしれ形の切粉は、切り屑が刃先にねばりついて構成刃先が発生したときに出ます。
アルミニウムなど粘り強い材料で発生しやいとされていますが、切削条件を最適にすると流れ形になる場合もあるので、条件を見直すチャンスかもしれません。
亀裂形
画像は「わかる!使える!機械加工入門(基礎知識)」より
ワークの、今まさに削っているポイントよりも先の部分に先に亀裂が入ってはがれていくような現象で発生します。
もろい材料(鋳鉄など)を旋削加工したときの切り屑に見られます。
構成刃先とは
構成刃先とは、旋削加工中にワークの切粉がとけてバイトについて、刃先にくっついて起こる現象のことを言います。
- 刃先に金属が溶着する=工具の長さが変わるので削り過ぎる
- 溶着した金属は刃物じゃないので切れ味が悪くなる
- とける、くっつくを繰り返すので刃先の形状が都度変わり、加工面が安定しない
等の悪さを起こします。
刃先にとけた切粉が付く=切粉でワークを削ることになるので、「ワークを切削する」というよりは「ワークをこする、ひっかく」ように加工することになります。したがって加工面が荒くなります。
柔らかいワークで発生しやすく、アルミニウムや軟鋼などを加工すると発生します。
構成刃先の回避方法
構成刃先の回避方法は、以下の4点がよく使われます。
- 条件を上げる
- すくい角を大きくする
- クーラントを使って冷やす
- 工具の材質を変える
条件を上げる
切粉は高温で、冷えて固まります。
対策方法として切粉が固まらないように条件を上げる方法がよくとられます。
- 回転数を上げる
- 切り込みを上げる
- 送りを上げる
すくい角を大きくする
これは構成刃先自体の解決法というより、構成刃先が発生したときの影響を小さくする方法です。
一般的に構成刃先の角度は30~40度になるので、工具自体のすくい角自体を30度程度にしてしまえば、構成刃先が発生してもすくい角の変化が小さくなると考えられています。(一般に構成刃先が発生すると見かけ上のすくい角が大きくなり、切削抵抗が低くなるといわれています。)
参考資料:CORE delivered by The Open University https://core.ac.uk/download/pdf/61350369.pdf
クーラントを使って冷やす
クーラントを使って構成刃先を防ぐ方法もあります。
ワークと工具の間にクーラントを流し込み、工具とワークの間にクーラントがある事で凝着を防ぐといわれています。
構成刃先の付着を防ぐ効果として有効だといわれているのが「極圧添加剤」が入ったクーラントで、加工温度が上昇すると金属の表面に膜をはって付着を防ぎます。
参考資料:Apiste(https://www.apiste.co.jp/gme/technical/detail/id=4058)
工具の材質を変える
工具とワークの材料の相性がいいと構成刃先ができやすいので、工具の材質を変えるとか、コーティングされた工具を使う、サーメットの工具を使うなどで対策できます。
旋削加工の加工条件の決め方
切削加工の加工条件は、「最終的には勘と経験、実験しながら」決める物ですが、前もって計算によって大まかな当たりを付けておくことができます。
ここでは最低限知っておくと何となく切削条件の求め方が分かるくらいの情報を残しておきます。
切削条件の決め方と加工時間の計算の仕方
切削条件とは、「切り込み量」「送り量」「回転数」の事を表します。
それぞれ数字が大きくなると除去体積が増えます。
加工時間(C/T:サイクルタイム)の要求や、品質の要求、工具の寿命などを考慮しながら決めます。
旋削加工の切削速度の計算
旋削の切削速度はVc=πDn/1000で計算できます。
Vc:切削速度(m/min)
π:円周率
D:ワークの直径(mm)
n:主軸の回転数
ワーク材質と工具の材質によって推奨される切削速度が大体決まっているので、それを参考にして回転数などの数字を決定します。
旋削加工の仕上げ面の面粗さ
大体の面粗さも計算で予想できます。
旋削加工の仕上げ面の面粗さはRy=f2/8R x 1000で計算できます。
Ry:最大高さ粗さ(μm)
f:送り量(mm/rev)
R:チップのノーズR(mm)
旋削加工の切削時間計算
切削加工の加工時間は「切削距離」、「送り量」、「回転数」から計算できます。
切削時間(min)=切削距離(mm)÷1分あたりの切削長さ(mm/min)
1分あたりの切削長さ=送り量(mm/rev) x 回転数(rpm:rev/min)
「旋削加工とは」まとめ
本記事では機械加工の基礎、旋削加工について簡単に解説をしました。
自動車のエンジン部品などで使うものから医療品の注射に使うボールねじ構造のシャフトまで、様々な軸形状のものを作れるのが旋削加工です。
当ブログでは筆者がものづくりについて勉強しながら知ったことを記事に順次反映していっています。
もしご意見、アドバイスなどありましたらお気軽に連絡をください。
将来の夢は、新入社員の教科書みたいなサイトを作る事です。
それでは明日もものづくり、頑張りましょう!