スカイビングとは【マシニングセンタで歯車を削る新しい加工方法】

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スカイビング加工とは
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スカイビングについて知りたい人向けの記事です。

スカイビングとは、「削ぐ」という意味があって、特別歯車加工のための専門用語ではありません。
高精度高速の旋削加工技術でも、「スカイビング」と言ったりします。

本記事ではスカイビング加工の中の「ギアスカイビング」や「パワースカイビング」と呼ばれる分野、つまり歯車の加工に関係する内容を取り扱っていきます。

本記事で知れること
  • スカイビングとは
  • スカイビングの特徴
  • スカイビング加工に使用する機械
  • スカイビング加工の精度について

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<筆者も読んだ参考書籍の紹介>

スカイビングに関して特化した本はAmazonでは中々見つからないので、まずは基本的な知識を学んでから、気になる単語をネット検索で探していくのが効率が良いと思います。

 

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スカイビングとは

スカイビング加工は”skive”という英語から来ています。

skiveという単語には「剥ぐ」みたいな意味がありますが、加工用語では歯車加工の「ギヤスカイビング」と旋盤加工の「ハードスカイビング」の二つとも「スカイビング」と呼ばれます。
ちなみに中国語では车齿加工(車齒加工)と言います。

 

▼ギヤスカイビング

 

▼ハードスカイビング

 

しかし「スカイビング」というと日本では「ギヤスカイビング(パワースカイビング)」を指すことが多いので、本記事ではギヤスカイビング(パワースカイビング)を取り上げています。

 

 

ギヤスカイビング(パワースカイビング)

 

ギヤスカイビングは、英語圏では「パワースカイビング」と言われることも多いです。

Power Skivingで検索すると日本語よりも多くの情報が取れるのでお勧めです。

 

参考:Google検索「Power Skiving

 

スカイビング加工ではワークと工具を同期回転させながら、歯車を徐々に噛み合わせるようにして歯溝を削っていきます。

 

ホブ盤やギヤシェーパと比較されることが多くて、ホブ盤よりも形状の制約が少なく、ギヤシェーパよりも加工時間が短いのが特徴です。
ほかにもマシニングセンタで加工できるので工程集約にも向いているというメリットがあります。

 

自動車業界でも非常に注目されていて、ハイブリッドやEV自動車では歯車部品は必要なので、量産性や高品質の追求のために盛んに研究されています。

 

スカイビングの特徴

スカイビング加工はマシニングセンタで行うので、「工程集約ができる」というのが特徴です。

 

▼スカイビングによる歯車加工のメリットは以下の5つ

  • 荒加工と仕上げ加工が一つの機械でできる
  • 外歯と内歯をひとつの工程で加工できる
  • ホブ加工よりも必要な逃げ量が少ない
  • ギヤシェーパよりも加工が早い
  • 歯車加工以外の工程とも工程集約ができる

 

少し深掘りします。

 

荒加工と仕上げ加工が一つの機械でできる

 

スカイビング加工では切削仕上げの歯車であれば一つの機械で荒と仕上げを完了させられます。

従来はホブ→ギヤシェービングみたいな荒と仕上げの工程分けが必要だった部品はスカイビングによって一つの機械だけで完了できるようになります。

 

外歯と内歯をひとつの工程で加工できる

 

スカイビング加工はマシニングセンタで行うので、マシニングセンタの一番の強み「ATC」を使用することができます。

つまり、1チャックで外歯と内歯を加工できるので、同軸公差が必要なワークでも対応できます。

 

また、チャックのし直しが不要なのでチャック跡の心配や位置決め精度の心配が減るので、工程設計をしやすくなります。

 

ホブ加工よりも必要な逃げ量が少ない

 

スカイビング加工に似た加工で加工が早いものに、「ホブ」があります。

加工の速さだけで競うとスカイビングがホブより優れているとは言えませんが、ワークの形状を考えるとホブよりも自由度が高くなります。

 

ホブ加工はホブカッターというトウモロコシみたいな形の工具を使います。

加工の姿勢の関係からホブ加工ではホブカッターの直径分くらいの逃げが必要ですが、スカイビングカッターはホブカッターよりも小さく、カッターの厚みくらいの逃げ量で加工ができます。

 

歯車の小型化、複雑な形状の歯車を加工する時に、この特性がメリットになります。

 

 

ギヤシェーパよりも加工が早い

 

内歯車や逃げ量の少ない場合の外歯車では、ギヤシェーパを使った加工がよく選ばれます。

ギヤシェーパによる歯車加工は軸の往復運動の速さ(送り速度)に依存するので、加工に時間がかかるのがネックです。

スカイビング加工では回転数に依存するので、ギヤシェーパに比べて加工時間が短くなる傾向があります。

 

 

歯車加工以外の工程とも工程集約ができる

 

例えば棒材ワークに歯車を加工する時、従来であれば

 

  • 径や端面の旋削加工
  • 旋盤で加工できない部分の穴あけ
  • ホブやギヤシェーパで歯車加工

 

のような流れで工程が分かれます。

しかしスカイビング加工を採用すると、元は多軸のマシニングセンタなので1つの機械で加工が完了します。

 

機械代が3台分よりも安ければ検討対象になるし、工程集約によって減少した機械2台分のスペースが空くので、工場を広く使えるメリットもあります。

 

 

スカイビング加工に使用する機械

スカイビング加工に使用する機械は、各メーカ様々出しています。

  • 三菱重工
  • 不二越
  • オークマ
  • DMG森精機
  • JTEKT

などなど。

 

YouTube上に動画がいくつか上がっているので、参考にしてみてください。

 

三菱重工のスカイビング加工機

画像引用元:三菱重工技報 Vol.56 No.1 (2019) 新製品・新技術特集(https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/561/561110.pdf

 

2021年2月に日本電産になった三菱重工の工作機械です(https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2102/08/news034.html
一時はJTEKTとの合併も視野に入れていましたが、最後は日本電産グループで落ち着いたみたいですね(https://newswitch.jp/p/13124

 

歯車加工機の技術は群を抜いていて、歯車研削盤も製造しています。

 

不二越のスカイビング加工機

NACHIのブランドでスカイビングセンタを製造しています。
工程集約を強く推していますが、不二越の強みはスカイビング工具を取り扱っているところです。

歯車の仕様に合わせてオーダーメイドのカッターを作れるところが魅力です。

 

オークマのスカイビング加工機

工作機械の王様、オークマのスカイビング加工機です。

オークマの工作機械は性能の良さで非常に人気があるので、スカイビング加工をする場合もオークマを選んでおけば間違いないよねという安心感があります。

 

DMG森精機のスカイビング加工機

海外での実績とコスパの良さから、あっという間に日本でも競合メーカーとしての地位を確定させた森精機です。
デザインも格好よく、性能もよく、値段も安いので、トヨタではかなり多くの森精機ブランドの設備があります。

 

知名度は圧倒的なので、「スカイビング」と研削すると頻繁に森精機が出てきます。

 

JTEKTのスカイビング加工機

ギヤスカイビングの量産化に貢献した会社の一つで、関連する特許をたくさん持っています。

ギヤスカイビングには相当力を入れていて、各勉強会や展示会向けにたくさんの研究論文を出しています。

 

スカイビング加工でできる物

 

スカイビング加工でできるものは、「歯車」です。

スカイビング加工は「スカイビング加工機」という専用機で加工するのではなく、エンドミル加工やドリル加工のように、マシニングセンタを使った加工方法の一つです。

 

なので「マシニングセンタを買ったからホブは使えない」というわけではなくて、形状の制約が無い状況で加工時間を短くしたければ、外歯はホブ、内歯はスカイビングといった使い方もできます。

 

というよりむしろこっちが主流で、スカイビングはもともとは「内歯車を速く加工したい」というニーズから流行りました。

 

 

スカイビングの歴史

参考文献:
https://home.komatsu/jp/company/tech-innovation/report/pdf/190329_02.pdf
https://www.jsme.or.jp/mmt/newsletters/doc/no55.pdf

 

スカイビング加工はW.von Pittler(ドイツ)で考案されたといわれていて、100年以上の歴史があります。

しかし当時は機械の剛性や回転数が現在ほど発達していなかったので実用化には至りませんでした。
2000年台後半、JTEKTが日本で初めて実用化に成功し、同時期から各社開発合戦が始まりました。

 

スカイビング加工では、次の3つが肝とされています。

 

  • 工作機械のスピンドル(剛性と回転数)
  • 主軸とワーク軸の同期回転
  • 工具の形状

現在ではこれらの肝になる技術、機械の性能が成熟し切った今、スカイビング加工が勢いよく普及しました。

自動車が電動化しても回転運動が無くなるわけではないので、今後も伸びていく加工方法の一つだと考えられています。

 

現在のスカイビングの加工精度は、公開されている情報の中で見てみると

と言われています。

 

▼歯車の精度に関するJIS規格はこちらです。

JIS B 1702-1:1998 円筒歯車ー精度等級 第一部(日本産業標準調査会:https://www.jisc.go.jp/
JIS B 1702-2:1998 円筒歯車ー精度等級 第二部(日本産業標準調査会:https://www.jisc.go.jp/
平歯車及びはすば歯車の精度(小原歯車工業:https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/gear_reference/KHK472.html

 

「スカイビングとは」まとめ

実は筆者の私も、新卒で入った会社ではひたすら歯車加工について調べていました。
スカイビングの利点、シェーパとの違い、類似特許とその抜け道などを一生懸命調べものした覚えがあって懐かしいです。

いまは全く歯車とは関係ない仕事をしていて、むしろ歯車は鍛造で出来上がってしまうので知識が直接活きてはいないですが、ものづくりの奥深さと探求心に触れたいい思い出です。

 

当ブログでは筆者がものづくりについて勉強しながら知ったことを記事に順次反映していっています。
もしご意見、アドバイスなどありましたらお気軽に連絡をください。

将来の夢は、新入社員の教科書みたいなサイトを作る事です。
それでは明日もものづくり、頑張りましょう!

 

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