円筒研削とは【旋盤形状のワークの仕上げ加工。精度はミクロン】
円筒研削の基本について知りたい人向けの記事です。
円筒研削は棒状のワークの仕上げ加工に使われます。
寸法の要求が厳しい、幾何公差が厳しい、他にも熱処理後の最終仕上げなど、精度の求められる場所で、研削加工を行います。
切削加工では旋削加工が最もポピュラーなのと似た感じで、研削加工では円筒研削がポピュラーです。
本記事では
- 円筒研削とは
- 円筒研削の用途
- 円筒研削の種類
- 円筒研削のメリット、デメリット
- 円筒研削のポイント
等について簡単に解説しています。
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円筒研削とは
円筒研削とは、円筒状のワークの外周を研削する加工です。
旋盤のようにして回転させて軸物を加工します。
円筒研削は英語ではCylindrical grindingと言います。中国語では円筒研削を外圆磨削(外圓磨削)と言います。
寸法精度や面粗さが良いのが特徴で、機械加工の最終仕上げに使われます。
ただし時間あたりに削れる量が切削加工よりも少ないので、荒加工では切削(旋削)仕上げ加工では研削という流れで工程を組んでいきます。
また砥石は非常に硬いので、熱処理後の硬いワークも加工ができます。
円筒研削とは
- 円筒状のワークを加工する研削加工
- 旋盤のように、円筒の外径を加工する
- 寸法精度が良い加工法
- 表面粗さが滑らかになる
- 時間当たりの加工量は旋盤よりも少ない
- 熱処理後のワークも加工できる
- 主に仕上げ加工として用いられる
▼その他研削加工については、まとめページを作っています。
研削加工とは【硬いものでも品質よく削る、仕上げ加工のエース】
円筒研削の用途
円筒研削の用途は主に以下の3つです。
- 円筒形状の軸
- 段付き形状の軸
- テーパ形状の軸
似たように外径を加工する研削加工としては、「センターレス研磨(研削)」がありますが、センターレス研磨は構造上の問題で軸の最外径しか加工できません。
いっぽう円筒研削では、ワークを両側のセンタで支持しながら加工するので、センターレス研磨よりも形状の自由度が利き、支持されている分精度も高くなりやすい特徴があります。
円筒研削の種類
円筒研削には、以下の4つの種類があります。
- トラバース研削
- プランジ研削
- アンギュラ研削
- クリープフィード研削
トラバース研削
トラバース研削は、ワークに対して横軸方向に移動させながら研削する加工法です。
砥石の幅方向に加工します。
加工の段差が生まれないので、砥石幅よりワーク幅が大きいときに使われます。
プランジ研削
プランジ研削では、ワークに対して前後方向(切り込み方向)に移動させて研削する方法です。
加工幅=砥石幅になりますが、砥石軸の剛性の強い方向への動きになるので、機械への負荷が少なく、トラバース研削よりも加工能率が挙げられます。
幅の広いワークはプランジ研削で能率よく削り、最後にトラバース研削で仕上げるみたいな方法も採用されています。
アンギュラ研削
砥石をまっすぐではなく、斜めから当てる研削方法です。
アンギュラはangularから来ています。
円筒研削では作れない形状を加工するために使われます。
外形と側面を同時に加工するなど、生産性が高くなるので量産に向いています。
クリープフィード研削
重加工です。
送りを下げる分切り込みを大きくして、ワークを1パスで加工しきるのが目的です。
砥石の型崩れが少ない事、加工前のワークの多少の凸凹を無視して加工できることから、難削材の精密成形加工に使われます。
実用化されたのは1970年と比較的最近の技術です。
JIS B0106では「低速で工作物を送って大きな切込みで行う総形研削。」と書いてあります。
円筒研削のメリットデメリット
円筒研削のメリットは3つあります。
- センターレス研摩に比べて加工精度が高い
- 溝や段差があっても加工ができる
- 汎用性が高い
逆に円筒研削のデメリットもあります。
- センターレス研摩に比べて生産性が劣る
- 長尺もののワークはたわむ
円筒研削盤と比較対象になるのはセンターレス研摩ですが、一般的にはこのように使い分ければOK
- 要求精度が高い→円筒研削
- 溝や段差がある→円筒研削
- 長尺のワーク→センターレス研摩
- 細いワーク→センターレス研摩
要求精度が出せるなら、センターレス研摩の方が量産性が高いとされています。
円筒研削のポイント
円筒研削で押さえておくべきポイントは以下の2つだけです。
- 加工方法の選択は要求精度から
- スパークアウトで精度向上できる
少し深堀します。
加工方法の選択は要求精度から
上で解説したように、円筒研削は「円筒形状の軸物ワークを加工する研削方法」です。
同じようなワークを加工できるのは「センターレス研摩(研削)」ですが、形状や要求精度から両者を選択します。
円筒研削の中にも、
- プランジ研削
- トラバース研削
- アンギュラ研削
- クリープフィード研削
と、削る方向や切り込みなどの違いで種類があります。
代表的なのがプランジとトラバースですが、砥石幅よりも加工幅が大きければトラバースの選択肢が出ます。
アンギュラ研削は特殊な研削盤を使うので、ちょっと別枠です。
クリープフィード研削は、特殊なワークで選ばれます。また具体的な内容を記事にて追記するので少々お待ちください。
スパークアウトで精度向上できる
円筒研削では最後に「スパークアウト」をする事で精度調整が期待できます。
これは切り込みゼロで行う空研削なんですが、研削加工では切り込みを入れるとワークが微妙に逃げるので、切り込みをゼロにするとその分の逃げがなくなり、最後の一押しができます。
2回か3回くらいまで、火花「スパーク」がでて、それ以降は出なくなるので「スパークアウト」と覚えます。
円筒研削の不具合と改善
円筒研削で起こりうる不具合には以下の3つのものがあります。
- びびり
- 送りマーク
- 精度不良
目的の形状を作るためには適切な加工方法(プランジ、トラバース、クリープフィードなど)の選定が必要です。
他にも砥石の選定、油剤の選定、回転数や送り、切り込みなどの条件設定などがあります。
これらの組み合わせによって一つの精度が達成できますが、「何が起きたらどうする」を知っておくと、問題の対策の一部を知れるのかなと思います。
円筒研削で起こる「びびり」の原因と対策
円筒研削では「びびり」がよく起きます。
砥石の細かい振動がワークの表面に影響します。
びびりの原因の多くは、砥石軸のプーリが緩んでたり、砥石の選定がよくないなどです。
研削盤の回転はベルトプーリで駆動していますが、適切な張力が決められています。定期的に調整することで突然の不良発生を抑える事ができます。
円筒研削で起こる「送りマーク」の原因と対策
円筒研削では、もう一つ「送りマーク」という不良がよく起きます。
送りマークとは、ワークの表面に送り方向の傷がつくことです。(参考:日本機械学会)
解決方法は以下のようなものがあります。
- 砥石の周速を落とす
- 研削の取り代を減らす
- ドレッシングの切り込みと送りを減らす
- 油剤を多くかける
- ワークと砥石が平行になっているか確認する
円筒研削で起こる「精度不良」の原因と対策
円筒研削の精度不良の原因は砥石や研削条件が適していないことです。
油剤の供給が少ないとか、砥石が硬すぎる、軟らかすぎるとか、切り込み量が多すぎる、少なすぎるなどです。
研削焼けや研削割れが発生した場合は砥石の硬さや切り込みをチェックしてみてください。
油剤の供給も冷却に効くので、突然の不良の場合は油剤の方向が変わってないかをチェックするのも有効です。
「円筒研削とは」まとめ
本記事では、円筒研削についての基礎を紹介しました。
円筒研削は自動車エンジンの要、クランクシャフトやカムシャフトに採用されている加工方法なので、日本の代表的な技術の一つです。
当ブログでは筆者がものづくりについて勉強しながら知ったことを記事に順次反映していっています。
もしご意見、アドバイスなどありましたらお気軽に連絡をください。
将来の夢は、新入社員の教科書みたいなサイトを作る事です。
それでは明日もものづくり、頑張りましょう!