焼きならしとは【金属組織を整える、鋼材にとってのサウナ】

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焼きならしとは
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焼きならし工程について知りたい人向けの記事です。
最低限の知識だけを記事にしているので、この記事の内容から興味を持って、次のステップに進んでもらえればなと思います。

 

本記事では

  • 焼きならしとは
  • 焼きならしの特徴
  • 焼きならしの目的
  • 焼きならしと焼きなましの違い
  • 焼きならしの対象
  • 焼きならしの工程

 

等についてお話します。

 

 

熱処理についてまとめページを作りましたので、その他の熱処理については以下のページをのぞいてみてください。

 

 

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焼きならしとは

焼きならしとは、鋼の機械的性質の改善、切削性の向上のために行う熱処理です。

英語ではnormalizing、中国語では正火と言います。

 

焼きならしで鋼の組織を均一にする

 

鋼材は、鋳造→鍛造→圧延という順番で作られますが、形状を無理やり変えてつくるので、結晶構造が安定していません。
そのため引っ張ったときの強度、引っ掻いたときの強度などの機械的性質が十分でない(ばらつきが大きい)ので、全体を均一化をして、鋼材として使える状態に整えます。

焼きならし工程はJISの加工記号ではHNRと書きます。

 

処理方法はFe-Cの平衡状態図のA3、Acm線より50℃くらい高い温度で加熱保持、空気中で冷却します。(オーステナイト変態後空冷と覚えます。)

(画像はWikipediaより)

 

焼きならしの特徴

焼きならしの特徴は以下の4つ

  • 組織が小さく均一になる
  • 機械的性質が改善する
  • 残留応力を除去できる
  • 加熱保温後、空冷する

 

これらについて、詳しく解説します。

 

焼きならしによって組織が小さく均一になる

 

焼きならしをした後の組織はフェライトとパーライトの混合組織になります。

加熱温度によってパーライトの結晶の粒が変わり、高すぎるとパーライト占有率が多くなって硬くなります。

 

適切な温度で焼きならしをするとパーライトは「微細パーライト」というものになり、電子顕微鏡を使って初めて層状であることが確認できるくらいの小さな組織になります。

 

焼きならしによって機械的性質が改善する

 

焼きならしをすると組織が均一になるので、「ある場所では強度がある、ある場所では強度がない」といった感じでバラバラな状態が改善されます。

 

炭素の少ない低炭素鋼や低炭素合金は、そのまま焼入れをしても固くならないので、焼きならし処理によって鋼材本来の機械的性質を引き出すことが多いです。

 

 

焼きならしによって残留応力を除去できる

 

焼きならしをする事で、鋳造や鍛造工程で発生した残留応力を除去できます。

ただし焼きならし後は新しく熱応力が発生するので、熱応力の発生を避けるために

  • 焼きならしを複数工程に分ける
  • 焼きならし後に応力除去焼きなましをする

といった工夫をされます。

 

焼きならしでは加熱保温後、空冷する

 

熱処理には焼入れ焼き戻し、焼きならし、焼きなましがありますが、それぞれ冷却方法の違いを覚えておくと、処理の違いを理解しやすいです。

 

  • 焼入れ→油で急冷
  • 焼き戻し→空冷
  • やきならし→空冷
  • やきなまし→炉冷

 

参考:熱処理のやさしい話(http://www.netushori.co.jp/story/index.html

 

焼きならしの目的

焼きならしの目的は、主に以下の5つです。

  • 組織の均一微細化
  • 機械的性質の改善
  • 残留応力の除去
  • 被削性の向上
  • 焼入れの前処理

これらについて、詳しく解説します。

 

組織の均一微細化

 

鋼材を作る工程では、金属の組織がバラバラになっています。

イメージでは、水に絵の具をかき混ぜずに投入して、そのまま固体にして、出してきた、、、みたいな感じです。
すると場所によって色合いが変わりますよね。(今思いついた適当なイメージです、参考にしないでください)

 

鋼材の内部でも似たようなことが起きています。

 

鍛造や圧延、鋳造で作った鋼材は部位によって冷却スピードや最大で到達した温度の違いがあり、結晶の粒がバラバラになっているので、熱を加えて落ち着かせます。

 

焼きならしをする事によって組織全体で成分を均一化します。

この時に結晶粒が細かくなって、電子顕微鏡でやっと層状が確認できる、「微細パーライト」という組織になります。

 

機械的性質の改善

 

焼きならしによって、衝撃性が大きく改善します。

理由は鋼材の金属組織が均一になるからです。

 

組織がバラバラになっている状態だと、場所によっては弱く、場所によっては硬く、、、みたいな状況になりますが、一様に同じ組織になると、ボトルネックになる場所がなくなるので、引張強さ、幸福点、伸び、絞り、衝撃値などの機械的が向上すると言われています。

 

ざっくり分別すると、

  • 焼入れは鋼材を硬くする処理
  • 焼きなましは鋼材を軟らかくする処理
  • 焼きならしは鋼材に「ある程度の硬さと粘り強さ」を与える処理

と言われています。

 

鋼材を硬くしたければ焼入れをしますが、焼入れは鋼材の炭素含有量で効果が決まってしまうので、低炭素の鋼材の場合は焼きなましを行うことが多いです。

 

残留応力の除去

 

鍛造、鋳造では、鋼材に「冷却ひずみ」が発生します。

これを焼きならしによって除去します。

 

焼入れでは鉄に炭素を固溶して急冷するために変態応力が発生しますが、焼きならしではこれがありません。

ただし焼きならしでは空冷中に熱応力が発生するので、これは「応力除去焼きなまし」または「二段焼きならし」によって解決します。

 

残留応力は鋼材の機械的性質の悪化をもたらすことがあるので、それを除去するために焼きならしを行います。

 

被削性の向上

 

鋼材の被削性を向上する目的のときは、一般的には「焼きなまし」を行います。

しかし低炭素鋼に焼きなましをすると軟らかくなりすぎてしまうので、切削時に粘ってむしれることがあります。
そんな場合に焼きならしを選択します。

 

被削性の向上を目的とする時は、以下の判断基準を目安にすると良いとされています。

 

  • 低炭素鋼:焼きならし
  • 中炭素鋼:完全焼きなまし
  • 高炭素鋼:球状化焼きなまし

 

 

焼入れの前処理

 

焼入れ時のオーステナイト化を促進するために、前処理としtれ焼きならしをする事があります。
理由は、焼きならしをすると組織が均一化するので、変態がしやすくなるからです。

したがって焼入れの前処理として焼きならしをする事もあるそうですが、、、、「行われる場合もある」というだけで、実際には見たことがないです。

 

鋼合金鋼や工具鋼など、高級鋼で行うことがあるくらいの認識でOKです。

ほとんどの人は人生で一度も出くわすことなく終わります。

 

焼きならしをすると結晶粒が微細化するので、焼入れで発生する変形の量が小さくなると言われています。(熱処理ガイドブックより)

 

焼きならしと焼きなましの違い

定義がめちゃくちゃよく似ている焼きならしと焼きなましですが、違いについて書いてあるものを片っ端から並べてみます。

 

  • 焼きなましは鋼材を軟らかくする処理
  • 焼きならしは鋼材に「ある程度の硬さと粘り強さ」を与える処理

Wikipediaより)

 

  • 焼きなましは組織の均一化+鋼材を軟らかくする目的
  • 焼きならしは鋼の組織を均一化する目的

製造タイムズより)

 

  • 焼きなましでは組織を均一化して材料を軟らかくする
  • 焼きならしでは金属の結晶粒を微細化+均一化する

町工場で働く薬剤師ブログより)

 

  • 焼きなましは材料を軟らかくする熱処理
  • 焼きなましはひずみがない組織を作る熱処理

技術の森より)

 

  • 焼きなましは中~高炭素鋼の被削性向上に利用する
  • 焼きならしは低炭素鋼の被削性向上に利用する

モノタロウより)

 

  • 焼きなましは、オーステナイト化した後炉冷する処理のこと
  • 焼きならしは、オーステナイト化した後空冷する処理のこと

三洋金属熱錬工業より)

 

焼きならしの対象になるもの

  • 圧延鋼板(SPCC、SPHC)
  • 機械構造用炭素鋼(S15C)
  • 冷間圧造用炭素鋼(SWCH10R)
  • クロム鋼鋼材(SCr415、SCr420)
  • クロモリ鋼(SCM415、SCM420)

参考:https://tohkenthermo.co.jp/technology/normalizing/

一般的に、炭素の少ない鋼材に使われます。

 

焼きならしの工程

焼ならしの工程は、以下の3ステップで行います。

 

  • 加熱
  • 温度保持
  • 冷却

 

簡単に説明すると、変態点以上まで加熱、全体をオーステナイト化させてから空気中で冷却する操作のことを、焼きならし処理と言います。

 

加熱工程

 

金属の組織が変わる温度(変態点)よりも50度くらい高い温度まで加熱します。

金属の組織が変わる温度は、Fe-Cの平衡状態図のA3線とAcm点です。ここよりも50℃くらい高い温度まで加熱します。

 

温度保持工程

 

大きさなど、熱の伝わりやすさに依存しますが、一般的には20mmの厚さに対して30分の保温時間を設定します。

 

他の熱処理と同じように、中心から表面までが十分に設定温度になるように設定します。

温度上昇が早い炉の場合は長めに、温度上昇がゆっくりの炉は短めに時間を設定します。

 

冷却工程

 

炉から出して、自然冷却します。

 

微細なパーライト組織を得るために、炉冷よりも早い冷却をします。

通常は静かな大気中で冷却しますが、大きい製品は扇風機で強制的に冷却したり、小さい製品はカバーをかけてゆっくり冷却したり、スピード調整をします。

 

焼きならしで起こる問題と対策

焼きならしで起こる加工欠陥には、酸化や脱炭があります。

どちらも酸素が起因して起こるので、完全に防ぎたい場合は鋼と反応しない中性のガスを炉内に満たす必要があります。

 

炉内温度が急上昇すると熱応力が発生して割れる可能性もあるので、大型の製品や形状が複雑で温度上昇に時間がかかるものは段階的に加熱する等の工夫をします。

 

変態による変形や、焼入れのように急冷による変形がないのは利点です。

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