製造業の仕事は勉強が多くてきつい。【日本が世界と戦える理由です】
「製造業ってきついよなあ」と感じている方に向けての記事です。
製造業の仕事は、設計から現場まで全員、本当にきついです。
自動車業界などは特に、人間の命に関わるものを作っているので失敗は許されないし、安く、効率よく、一定の高品質で納品することが求められます。
海外に出てみると、ここまで厳しい管理をされることにびっくりします。
何でここまできついことをするのか?気になりますよね。
実は日本の品質は、今でも世界的に見て高品質です。
不具合があればリコールに対応する(参考:トヨタのリコール記事)し、普段のものづくりも非常にシビアで、きちんと守ってたら不良品など出るはずがないくらい作りこまれています。
その上でコストを下げて、価格競争力も持たせようとしているので、日本のものづくりは勉強が多くて大変なんです。
製造業のきついところを説明するために、日本が世界に向けて発信している日本品質の作り方について、一部を紹介します。
日本のものづくりの勢いは確かに以前ほどではないですが、それでも、世界は日本のものづくりを見て学んでいるところもたくさんあります。
製造業のきついところ①:日本品質のイメージを裏切ってはいけない
日本製品は「メイドインジャパン」として、世界中で人気だった時代があります。
品質が良く、その割に安いというのが、日本製品の大きな特長です。
高品質を守るために、私たちはこんな取り組みを求められています。
- 現場の品質管理力が求められる
- 品質の良い製品の設計力が求められる
- 不具合があれば、すぐに対応できる仕組みを求められる
少し詳しく、解説しますね。
現場の品質管理力が求められる
品質の良い製品を作り、良品だけを流通させるためには、現場の意識が大切です。
「ただ作業をこなせばいい」という現場と、「良品と不良品の違いを見極めながら作業をする」という現場なら、後者の方が不良品の流出を減らせますよね。
どれだけ完璧に近い製造工程を組んでいても、不良品の発生は避けられません。
したがって日本品質では、「いかにして不良品を流出させないか」という現場の品質管理能力が求められます。
品質の良い製品の設計力が求められる
現場での流出防止策をとっていても、その関所で止めきれない不良品があります。
したがって、次に有効なのが「発生防止」という考え方です。
そもそもの不良品の発生率が低ければ、現場の流出防止も相まって市場に不良品が流れる可能性が大幅に減らせます。
製造工場では効率がよく、さらに品質を守れる工程設計が必要だし、開発会社では工程設計がしやすいような構成、公差設計が求められます。
不具合があれば、すぐに対応できる仕組みを求められる
日本製品の信頼に寄与しているシステムの一つに、トレースアビリティ(通称トレサビ)があります。
もし製品の不具合を見つけたら、問題の発生したロット、工程などを瞬時に割り出し、リコールして品質不具合をつぶしこみます。
10年に1回より短期間のペースで日本メーカーの大型リコールがニュースになりますが、これは日本メーカーの品質への信頼が関係しています。
たまに「こんなのでもリコールするの?」というレベルの厳しいリコールがあったりしますが、それはその企業の品質にかける思いが関係しています。
製造業のきついところ②:価格競争力を維持しなければいけない
日本の製造業が年々きつくなっている理由の一つに、「日本製品が高すぎる」という問題があります。
同じような品質で日本の半額以下で製品を作れる国もあるので、安売りだけでは戦いきれなくなってきています。
ライバルは欧米企業ではなくアジアの国
例えば中国、昔は人件費の安い国の代名詞でしたが、今では製品を開発して、日本よりも安く、日本よりも高機能で魅力的な製品を作る国になりました。
韓国も家電が強いし、アジアの国は良い製品を安く作れるので、ライバルがどんどん増えています。
「安いのに高品質」が日本の強み
日本の絶対的な強みは「全然壊れないのに安い」という品質の良さ、コスパの良さです。
これは日本の不思議なところで、「起きてない問題についても対処しておく」という一種変態的な品質へのこだわりからきています。
しかしそのしわ寄せは社内に来るので、まあ仕事はきついです。
でも日本からこのこだわりを取るとよその国との差別化ができなくなるので、日本製品が売れなくなります。
このひと手間が、日本ブランドを作り、守り、信頼につながっています。
製造業のきついところ③:利益を上げるために、製品を数多く作らなきゃいけない
私が個人的に思う製造業の一番きついところは、「物の価格がほぼ固定されている事」です。
サプライヤーは発注側に料金決定権を握られていて、一度決まった料金を変更することは許されません。
「不具合の改善だ」と言って作業を増やすときはスムーズですが、基本的には一度決まった工程を変更するためには3か月前から膨大な書類と会議が必要なため結局コスト的に合わなくなるので、工程を減らすことはできません。
さらに、「工程監査だ」と言って突然すべての製造過程を見に来たりするので、こっそり工程を削除して儲けを増やす事が許されません。
製造業が儲けるためには、大量の製品を作る「薄利多売方式」が基本です。
したがって製造業の利益率は4.0パーセント(参考:経済産業省)と、かなり低い水準になっています。
「誰でも」「早く」「同じ品質で」作り上げる仕組みが必要
製造業が利益を上げるためには薄利多売方式が基本なので、会社では「誰でも」「早く」「同じ品質」で製品を作る仕組みを設計するのが仕事になります。
あまり無機質な仕事にするとみんな辞めちゃうし、あまりクリエイティブにすると再現性がなくなるので、頭を抱える問題ですよね。
そして標準化された仕事は一つ情報が洩れると瞬く間に買いたたきや模倣につながるので、機密管理が厳しいのはこういうところからきています。
休みなくひたすら働くために、時間に追われる
製造業のきつさを実感するのは、ひたすら時間に追われるところです。
ラインではたった1秒ですらコストとして計算するので、サボる事が許されません。
しかし会議はコストとして計算しないので、しわ寄せはオフィスワーカーに来ます。
このせいで体力のない中小企業は社員が猛烈に働く必要があって、要領がつかめないうちはかなり苦しい思いをします。
製造業にきつい仕事が多いのは、日本を支える大切な仕事だから
日本の製造業がきつい理由は、製造業が日本の基幹産業だからです。
さらに世界の強力なライバルと対等な立場で戦っている産業でもあるので、優秀な人とのしのぎ合いになるので努力を強いられます。
頑張らないと世界に置いて行かれる
日本は確かに技術大国ですが、世の中の製品がほぼコモディティ化(機能がほぼ満足された)してしまった状態では、値下げ競争くらいしか戦うものがありません。
ここに技術力を勝手に付加しても、昔の3Dテレビのように売れないものに無理やり新機能を付けて自滅する道しかありません。
そこで海外はこんな作戦をとってきました。
ガソリン車の廃止
法律を使って国や経済圏丸ごとでパラダイムシフトを起こしました。
これによって新しい価値提供、新しい技術開発が必要になるので、先進国が有利に戦える環境を作りました。
しかし日本はガソリンエンジンの設計製造が強みだったので、この流れに遅れそうになっています。
頑張らないと、日本の製造業ごと思い切り破壊されるかもしれません。
日本のものづくりには、世界にもっと評価されるべき魅力がある
しかし日本のものづくりは、自動車だけではありません。
過去は家電もゲームも、日本の代名詞でした。
自動車以外にもものづくりへのこだわりがあって、特に安全安心に関わるもの、耐久性に関わるものについては日本の精密さは、まだまだ戦えるはずです。
海外に行くと、「なんで日本人なのに日本製使ってないの?僕は日本製品結構買ってるよ」と言われることがあるくらい、今でも信用はあります。
どんなところで評価を貰っているのかを知るために、私は海外に出ました。
あなたも一緒に製造業を守る仕事をしませんか?
私の将来の夢は日本のものづくりを守る事です。
やるべき事は3つあります
- 海外に販売したい中小企業に向けて、臨時通訳の協力
- 海外から見た日本の強みを研究して、共有する
- 日本の中小企業の技術やノウハウを集結して、海外で戦うための場所を作る
もう間もなく始動します。製造業を次世代に残すために、一緒に活動しませんか?
当ブログでは筆者がものづくりについて勉強しながら知ったことを記事にしています。
もしご意見、アドバイスなどありましたらお気軽に連絡をください。
将来の夢は、製造業のみんなが気軽に集う場所を作る事です。
それでは明日もものづくり、頑張りましょう!