Xbar管理図について【管理状態を簡易的に確認できる便利ツール】
こんにちは、トモ(@Japan_MFG_Tomo)です。
日本に帰国して、いまは町工場で働いています。
中国勤務時に学んだ技術知識を社内に伝えながら、
孤軍奮闘で社内のDXを推進しています。
町工場にいると、エンジニアのバックグラウンドが全然違います。
例えば大企業であれば有名な大学院で機械工学を勉強してきたみたいな
エリートが集まっていますが、
町工場では、文系出身だったり、製造業は初めてだったりで
技術的な話は経験から学んできた人が多いです。
そんな人たちと一緒に、最近はQC手法について勉強しているので
その内容をシェアしたいと思います。
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Xbar管理図の意味
Xbar管理図の目的は、
「工程が管理状態に保たれていることを、簡易的に確認する」
ことです。
Xbar管理図でわかることは、
- 「工程は、予想されるばらつきの中で推移しているか?」
- 「異常の傾向は出ていないか?」
の2点。
予想されるばらつきとは、
平均値±3σの範囲のことです。
この中に、データは99.7%で収まると、統計的にわかっています。
※注意事項として、本来はσは母集団の標準偏差を表します。
ものづくりの世界で母集団はわからないので、ここに若干の誤差が出ることが考えられます。
とはいえ、たくさん作れば母集団に近い分布を示すはずなので、初心者レベルの私たちはそれくらいの認識でいいんじゃないかなーと思っています。
Xbar管理図で管理するための前提条件は、「工程が管理状態であること」です。
- 平均値とばらつきの正常な状態が分かっている
=毎回のデータがある程度の範囲内に収まる - 品質に影響を与える変化点(4M1E)に適切に対処している
→工程が管理状態であれば、数値のばらつきの要因は「偶然要因」だけになります。
偶然要因とは、確率的にばらつく、理由を説明できないもので、
ばらつきを全部足し合わせるとゼロになる=N(0,σ2)に従うもの。
逆に、偶然要因でないものは、摩擦とか、温度変化とか、理由が説明できるものです。
Xbar管理図の使い方
Xbar管理図は、こんな感じで運用します。
- 規格線を決定する
- データを測定して、プロットする
- 異常があれば、打ち上げる
規格線を決定する
過去の大量のデータまたは設計時に決めた、「この範囲に収めたい」という規格値から、データの上下限規格値を決定します。
設計時に決める場合は、設計者の意図で決まります。
教科書等で説明されるのは、母集団の平均と標準偏差から決定する方法。
縦軸の中心をμとして、
中心を挟んで±3σのところに上下限規格値を決めます。(上図でいうと黄色のライン)
異常の打ち上げをしやすくするために、±2σ、±1σにもラインを引くこともあります。
データを測定して、プロットする
生産中にサンプルを抜き取って、測定値の平均を管理図にプロットします。
- 1個だとばらつきが分からない
- 2個だと平均値が上下の真ん中になる
という事で、3個とか5個とかを選ぶことが多いって聞きました。
どれくらいシビアに見たいか、会社の基準はどうなっているか等で、サンプル数を決めればいいんじゃないですかね。
さすがに生産中の傾向管理にAQLみたいに大きなサンプルを取る必要はないと思いますが、業界によってはそういうのがあるかもしれません。(JISZ9015-1:2006 計数値検査に対する抜取検査手順-第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式 (kikakurui.com))
異常があれば、打ち上げる
JISで紹介されている異常の定義を参考にして、社内でのルールに従って、異常を発見したら打ち上げます。
この時に、平均値±3σ、±2σ、±σのエリアをABCゾーンと名付けて異常の定義を行います。
Xbar管理図にR管理図を組み合わせる
Xbar管理図を作ったら、同時にR管理図も作って管理します。
サンプル数が10個とか、多いときはs管理図を使うみたいですが、今回はR管理図を紹介。
Xbar管理図で拾ってきたサンプルから最大値-最小値=範囲(R)を計算して、管理図にプロットします。
R管理図の中心と上下限は、JISの表から決定します。
参考サイト:JISZ9020-2:2016 管理図-第2部:シューハート管理図 (kikakurui.com)
X-bar管理図に使う基本統計量
ここで使うのは平均、標準偏差、範囲だけです。
あとは表から数字を読み取ってくるだけ。
具体的な計算式は、画像を見るか、またはググって探してください。
一見難しそうな数式ですが、計算内容自体は中学生でもできます。
数学苦手なあなたも、是非頑張ってみてください。
Xbar管理図の注意事項
管理図の目的は、「工程が管理状態にあるかどうかの確認」です。
μ±3σを使って線引きしているので、「本当は管理状態なのに管理外れ状態だ」と判断する第一種の誤りαの確率は、100%-99.7%=0.3%あることに注意。(画像では0.03%と誤記しています。ごめんなさい)
また、工程が管理状態である前提で管理図を作っているので、管理状態でないものは評価できません。
あくまで簡易的な判断を行うためのツールです。
「範囲内にプロットがあればOK」
という基準で動くので、検定して「変化した」といえるか微妙なラインでの平均値の変化があると、見つけられません。
小さい誤差のプラスマイナスの積み重ねで、もともとの平均値に戻ってきちゃった場合も、異常を見つけられません。
そんなこんなで、本当は管理外れなのに「管理状態だ」と判断してしまう第二種の誤りβは評価できません。
これも注意。
とはいえ、現場で数値を入力して、自分たちで異常を管理できるようになるので
使えるようになるとかなり強力なツールになります。
ぜひ、現場に取り入れてみてください。