抜き取り検査について。AQLとOC曲線によるサンプル数の決め方を説明
抜き取り検査で運悪く不良が見つかった時…悔しいですよね。
他の大部分は良品なのに、なぜ検査員は不良品を引いてしまったのかと恨みたくなりますよね。
抜き取り検査は、本来合格させるためのもの、不良品は引かない事前提で成り立っているので、
不良品が出た段階で、統計的には結構アウトなんですよね。
今回は、抜き取り検査について簡単に紹介します。
本記事で使用しているスライドはこちらからDLできます。
また、関連するJISで詳細が知りたいときは、JIS Z 9015を見てください。
ここでは、一部無料で見れるサイトを紹介しておきます。
JISZ9015-1:2006 計数値検査に対する抜取検査手順-第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式 (kikakurui.com)
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抜き取り検査とは
抜き取り検査とは、大きな箱から一部のサンプルを抜いてきて、ロット全体の合格/不合格を統計的に決定する検査方法です。
抜き取り検査の目的
抜き取り検査の目的は、工数を減らすこと、検査数を減らすことです。
統計的に不良をコントロールしたうえで、経済的に検査を行い、コストダウンと品質確保を両立させます。
また、熱処理の硬度測定など、破壊検査になるものは物理的に全数検査ができません。
そういう場合にも、一部のサンプルで全体を代表する検査方法がとられます。
抜き取り検査の概要
- Step1:検査するサンプルを抜き取ってくる
- Step2:抜き取ったサンプルを検査・測定する
- Step3:検査不適合数を数える
- Step4:不適合数が基準以下ならOK、基準を超えればOUTと判断する。(その後は異常処置規定に従う)
抜き取り検査のメリット
- 検査工数を減らせる
- 破壊試験の場合は、全数検査が不可能なので、現実的な方法として採用できる
- カンコツではなく、統計学的に根拠を持たせることができる
抜き取り検査のデメリット
- 確率的に、不良が存在する
- 毛園サインのスキルtに、ロットの合否が左右される
抜き取り検査のサンプル数の決め方(AQLから)
Step1:ロットサイズを確認する
Step2:検査水準を決定する
Step3:ロットサイズと検査水準の交わる点が、サンプル文字
Step4:AQLを設定する
Step5:サンプル文字とAQLの交わる点が、合否の境目
Step6:矢印が付いていれば、その矢の頭の方に進み、一番最初に見つかったものが、合否基準
上の画像を、もう一度見てみてください。
例えば、ロットサイズが600であれば
表から、501-1210を見ます。
検査水準は、基本は通常検査のⅡを選びます。
それよりも判別力が弱くてもよければⅠ、もっと厳しくしたいときは、Ⅲを選びます。
2つの線が交わったところが、サンプル文字になります。今回はJになります。
次に、AQLとサンプル文字の交わったところが合否の判断基準になります。
Acはロット合格となる基準で、Reはロット不合格となる基準です。
例えば、0,1と書いてあれば「不良率が0個以下なら合格、1個以上なら不合格」と判断するという意味になります。
AQLの数値は、「AQLの数値の時に、95%(1-α)の確率でロット合格になりますよ」という所のライン、上の方で説明したp0に当たる数値です。
今回は、サンプル文字がJなので、
「80個抜き取り検査して、不良率が0個以下なら合格、1個以上なら不合格」
という事になります。
抜き取り検査のサンプル数の決め方(OC曲線から)
OC曲線を引くために必要なパラメータは
- α:合格にすべきロットを不合格と判定する確率
- β:不合格にすべきロットを合格と判定する確率
- P0:合格率が1-αとなるときのロット不良率
- P1:合格率がβとなるときのロット不良率
ここから、(p0,1-α)、(p1,β)を通るように
nとcを決めます。
- nはサンプル数
- cはロットアウトにする不適合品数
です。
上の図にある様に、
ロットの不良率と検査合格率の列を作って、
エクセルを使って、
=Binom.dist(c,n,ロットの不良率,true)
で検査合格率を計算します。
あとは、(p0,1-α)、(p1,β)になるように、nとcをいじればOKです。
抜き取り検査実施の基準
抜き取り検査は、統計を使ってロット全体の合否判断をします。
統計としての前提条件が狂うと、途端に信用できない数字になります。
前提は工程が管理状態であること
抜き取り検査を行うための前提条件は、「工程が管理状態であること」です。
- Cpkが十分にあって
- 管理図上も異常が出ていなくて
- 4M1Eの上でも異常が無くて
「いつもと変わらず良品を作る条件で製品をつくった」という時に、統計の出番です。
工程が管理状態であることが必要な理由
工程が管理状態で無きゃいけない理由は、
品質を数値で表して予測するために、予想の範囲に収まっている必要がある
から
上手く言えてないですね。
工程が管理状態=平均もばらつきの幅も、想定内
管理状態を維持している=異常はない=不良率は平均とばらつきで予測できる
だから最終確認のために抜き取り検査をします。
最後に提案
工程が管理状態であれば、不良の発生確率自体は相当に低いはずですよね。
だから、β(不合格のロットを合格にする確率)を細かく決めなくても、
そんなに不良率が高くなることは、ないはずですよね。
だとしたら、不良率が極端に悪い領域は無視しちゃって、
αだけを評価したら、サンプル数を思いっきり絞ることもできるんじゃないかなと思っています。
私は検査の現場にはいないので実験はできないですが、
なんか成り立ちそうな気がしています。
興味がある方は試してみてください。