不良率の計算方法について【単純な計算と、統計学的な計算を紹介】
こんにちは、トモ(@Japan_MFG_Tomo)です。
日本に帰国して、いまは町工場で働いています。
中国にいる時に大企業のお客様から教えてもらった技術的な内容を社内に伝えながら、孤軍奮闘で社内のDXを推進しています。
町工場にいると、エンジニアのバックグラウンドが全然違います。
例えば大企業であれば有名な大学院で機械工学を勉強してきたみたいな
エリートが集まっていますが、
町工場では、文系出身だったり、製造業は初めてだったりで
技術的な話は経験から学んできた人が多いです。
そんな人たちと一緒に、最近はQC手法について勉強しているので
その内容をシェアしたいと思います。
今回は不良率の計算についてです。
- 不良率の定義の話から
- 歩留まりとの違い
- 統計的手法を使った不良率の計算
こんなことを解説しています。参考になれば幸いです。
この記事で使っているスライドはこちらからDLできます。必要なら…ですが。
不良率の計算方法
不良率の計算方法
単純に、「不良率」を計算するように言われたら、不良数を生産数で割って、パーセントの単位に直すだけで完了します。
不良項目ごとの不良率を見たければ、
(各項目の不良数)/(生産した総数)を計算して、適宜パーセントに直すために100倍する等の操作をすればOKです。
ここまでは簡単ですね。
不良率の単位について
不良率は、基本的には
%(パーセント:百分率)
100個中いくつ不良が出るかで評価します。
しかし、たまにこんな単位が出てくることもあります。
‰(パーミル:千分率)
1000個中いくつ不良が出るか。1‰=0.1%
PPM(ピーピーエム:Parts Per Million;百万分率)
100万個中いくつ不良が出るか。1PPM=(1/10,000)%
業界によってはよく使うそうですが、
あんまり使わない業界では、出てきた時に都度確認すればOKです。
不良率を計算する目的
不良率を計算する目的は、大きく分けて2つの観点から説明できます。
品質目標としての目的で不良率を計算する
品質管理のゴールは、「不良ゼロ」です。
そこまでの段階的なステップとして、不良率の推移を見て、改善方法を検討します。
ツールとして、QC7つ道具(管理図、散布図、グラフ、チェックシート、パレート図、特性要因図、ヒストグラム)や工程能力指数などを使います。
経営指標として
営業の見積もり時や、経営計画等を立てる時に、
- 生産数から売上と原価はいくらで
- その内不良による損失がいくらで
- 損益分岐点がどこにあるのか
なんかを計算します。
ここから「不良率●%!」という年度目標とか、製品の単価が決まります。
不良率を下げるための考え方
不良率を下げるため方法論として、以下の3つを紹介します。
- モニタリングの実施
- 発生率を下げる、会社としての機能
- 精神論
モニタリングの実施
- 不良率はいまどれくらいかな
- 決められた手順通り作業をしているかな
- 改善の方向性は正しいかな
というのをモニタリングします。
具体的な方法として、
「不良率が下がったかどうか」をデータから判断したり(統計的仮説検定を使うこともあります)、
管理部門の人が抜き打ちで作業手順を確認したり、
会議の中で「どんなことをするのかな」というのを確認したりします。
見られていれば中々サボれないし、
長く続けていればその内に良いアイディアが出てきたり熟練度が上がったりして、
勝手に結果が出るようになります。
緊急を要する時はマイクロマネジメントをすることもありますが、
基本は「まずやらせて、適宜相談を受ける」という形でOKなんじゃないですかね。
発生率を下げる、会社としての機能
近年のものづくりでは、「全体最適」を求められることが増えてきています。
部分最適では、ある部門では「これが一番いい」と思う解が、他の部門では逆に悪影響を及ぼすことがあるからです。
例えば、
- 品質関係の部門では、「生産性とか知らないから、とにかく良品を作ってほしい」という願いがあります。
- 生産管理部門では、「不良が出たら検査で弾けばいい、とにかくたくさん作って生産計画に遅れるなよ」という願いがあります。
- 現場部門では、「作業しやすく、大量に、良品だけを作りたいけど、その分のリソースが無いから無理」なんてことを思っているかもしれません。
逆に全体最適では、各部門における影響を考慮して、それぞれの効果は小さいけれど、会社全体として良い効果があるやり方を求めます。
そこで必要なのが、部門横断型の組織です。
改善のための小集団活動
「QCサークル」と呼ばれたりもしますが、名前は何でもいいです。
部門横断型でチームを作って案出しをして、
そこで出てくる案に従って改善を続けていれば、
きっと上手く行くでしょといった感じの取組です。
定期的に改善効果の発表会をしたりして、
無理やりにでも改善が進むようにします。
ここでは、QC手法を使う機会が多いので、
共通言語のためにメンバー全員がQC3級レベルの内容を理解しつつ、
一部のメンバーがQC2級の手法を使って数字を分析すると、
効果の出方が数字で見られるので面白くなります。
最後は精神論
結局は精神論になってしまうんですが、
社内のメンバーが「不良をゼロにするぞ!」という強い気持ちを持っていれば、
「次はこうやって挑戦したい」というアイディアが多く出てくるので、自然と不良率は下がります。
とはいえこの文化を根付かせるのは難しいので、数年単位で時間が掛かることは覚悟しておいた方が良さそうです。
不良率と似た言葉:歩留まり
不良率と歩留まりは、似たような言葉に聞こえますが、意味は異なります。
歩留まりの中に、不良率が含まれる関係です。
歩留まりとは
材料全体に対する、良品の割合です。
例えば材料100g x 100個を使用して製品を造ったら、良品は20g x 50個だったとします。
この場合の歩留まりは
(20×50)÷(100×100)=0.1
歩留まりは10%になります。
不良率との違い
不良率は、生産数に対する不良数の割合なので、100個製品を造った内50個良品であれば、
50÷100=0.5…(良品率は50%)
したがって不良率は100%-50%=50%となります。
比較すると全然違いますよね。
歩留まりは材料をグラム単位で見ていて、不良率(良品率)は材料を個数単位で見ているところに違いの原因があります。
統計的に不良率を計算する方法
QC手法って面白くて、QC2級レベルの知識を使うと結構いろんなことが分かります。
製品を全数検査して不良率を計算するのは簡単ですが、コストダウンや生産性の向上のために、抜き取り検査をすることが多いですよね。
その場合は、統計的な判断をしています。
Cpkから不良率
例えばよく使うCpkという指標は、サンプルを30個とか100個とか集めてきて、その測定数値からばらつきと平均値を計算して、工程能力を求めます。
この工程能力が分かると、統計的に不良率が分かります。
よくCpk>1.00とかCpk>1.33とか、Cpk>1.67とか求められますよね。
- Cpk>1.00なら、不良率は3/1000以下
- Cpk>1.33なら、不良率は6/10万以下
- Cpk>1.67なら、不良率は6/1000万以下
みたいな数字になります。
どれくらいの不良を許容して、全数検査から抜き取り検査に移行しようかな?と考える時によく使います。
また、Cpkが十分高いなら、
不良がそもそも発生しにくい=工程は管理状態である
と言えるので、検査能力を増強するよりも、
工程が管理状態であることをキープするのが得策です。
コストも安くなるし、不良を作らない状態がそこにあるからです。
この時に、管理図を使います。
正規分布表から不良率
Cpk以外にも不良率を計算する方法があります。
サンプリングされたデータから直接不良率を求めたいなら、
QC2級の試験範囲である、KpからPを求めるやり方があります。
データが標準正規分布に従うとき限定で使える手法ですが、
データはたくさん集めれば正規分布に従う(中心極限定理)ので、
そこはあんまり気にしなくて良さそう。
正規分布のグラフは、平均を引いて標準偏差で割ると正規化できるので(標準正規分布になる)、正規化したときの数値をKpとして、その値を表から探して、出てくるPが不良率になります。
でも、こんなことQC検定の試験くらいでしか使いません。
同じ計算は、エクセルでできます。
エクセルで不良率計算
データを集めてきて、エクセルで「Norm.dist(……,true)」で計算して終わりです。
…に入るのは、x、平均、標準偏差です。
- xは、規格値
- 平均は「=average」で計算
- 標準偏差は「=stdev.p」で計算
これで不良率が計算できます。
品質管理って難しいですけど、統計を使い始めるとすごく先進的なことをしているみたいで楽しいので、頑張って勉強してみてください。