変化点管理の大切さについて。量産工程の不具合は変化点から多発する

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量産工程でとても重視される変化点管理。
管理を要求されて点検する側は大変だし、実際に問題もほとんど起こらないし、「何のためにやるんだろう」って思いますよね。

 

その感覚とは裏腹に、量産工程では変化点をよく気にします。
それは、安定している状態に何か変更を加えると、途端に不安定になる事例が場所を問わず過去に何度も何度もあったからです。

 

したがって現場では5M1E管理とか、4M1E管理とか言われる管理をするようになりました。

 

 

技術者は変化点を非常に注意します。
量産ではちょっとの変化で大量の不良を生み出すリスクがあるので、極力変化を加えないように、加えるなら少しずつ、様子を見ながら。

 

以前こんなツイートをしました。

 

昔の話をします。

とある量産部品の材料メーカーが客先指定だったんですが、客先と材料メーカーが勝手に材料の製造工程を変更、こちらには通知なし。
本当は加工条件の微調整が必要なのに対応できず、我々の大量不良を生み出し客先と大喧嘩する事件がありました。

たまたま我々のロット管理が完璧だったのと、今までの関係が良好だったため運よく損失の補填をしてもらって済みましたが、変化点管理をしていない会社だと、おそらく大規模リコールになってたんじゃないですかね。

 

 

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変化点管理は、量産工程では非常に重要

 

量産工程では本当に、口を酸っぱくするほど言われる変化点管理。
大量不良や「まさか」は変更点、変化点から発生する事が多いので、ものづくり業界では特に変化点を気にするようになりました。

 

量産工程で求められるもの

 

量産工程で求められるのは、「同じ程度の水準で、製品を大量に作る事」です。
この基本から考えると、安定して変化のない工程で物を作った方が、一度安定し始めたらリスクが少ないのは想像がしやすいと思います。

 

その、「リスクが少ない工程」がまさに会社にとっての資産で、注文さえもらえればいくらでもお金を生み出すことができるようになります。

 

安定した工程を作るためにCpkとか管理図とかで確認しますが、Cpkや管理図は後からの品質変化の確認をするのに対して、変化点管理は事前に注意すべきことがわかる特徴があります。

 

変化点管理は、客先からも要求される

 

お客さんからとっても、サプライヤーの変化点がそのまま市場の大規模クレームにつながるリスクがあるので、大きな関心事になっています。

大量生産する製品を扱うお客様にとって、大量不良を起こされたらたまったものじゃないですからね。

自分の生産ラインが止まるし、サプライヤー管理に対する評判も下がるし、良い事がありません。
したがって大きな変化点を加える時は、FMEAを要求したり、事前の工程変更届の提出と十分な検証時間を要求されることがほとんどです。

 

変化点管理をする理由

 

変化点管理をここまで重視する理由って何なんですかね。

何となくの理由は分かったけど、いまいちパッと理解できないですよね。

 

結論は、大量不良は、「まさか」から発生することが多いからです。

 

よくある事例で、「バレなきゃOK」という感覚で「えいや」と変えると、担当者がいなくなったころに大規模市場クレームが発生するリスクがあります。

そして出てくる釈明は「当時の担当者がすでに退職しており…」が多いです。

 

 

変化点管理のしかた

 

変化点管理の仕方として、一番有名なのはおそらく4M1E管理。

Man, Material, Machine, Method, Environmentの頭文字をとっています。

 

会社によってはMeasurementを加えて5Mにしたり、別の頭文字をとったりします。

 

これらは図面に表しきれない変化点なので、知らず知らずのうちに大きな問題になる事もあります。したがって、変更点を加える時に、メンバーがFMEAを熟知していると事前に問題を潰せて、会社を救います。

 

変化点の管理を怠ったリスクは誰のもの?

 

変化点管理は、本来は「変化を加える人とそのお客様」が双方でリスクを容認して実施するものですが、製造業の多くの場合はお客様が神様であることが多く、リスクはすべてサプライヤーのものとなる事が多いです。

 

したがって喧嘩してでも嫌われてでも、リスク回避は絶対。
客先の泥船に載せられて一気に沈まれたらこっちこそたまったものじゃないです。

 

メーカーがサプライヤーに変更を指示することも多い

 

製造業では、コストダウンのためにサプライヤーに色んな無理を強いています。

  • 材料の変更
  • 工程の変更
  • 加工条件の変更

などなど、「自分たちさえよければそれでよし」の考えで結構めちゃくちゃやってきます。

その時のリスクも当然、サプライヤーのもの。

 

したがって何か変更点を加える時は

  • 量産単価の再設定(サプライヤーに有利に)
  • 不良の取り扱いについての合意
  • 十分な試験期間

を確実に準備する事がおすすめ。

あまりにも無理を言うときは、そこはビジネス判断です。

 

 

変化点を管理しなさいと言いながら、内緒で変更を入れてきた客先と戦った話

 

メーカーとお付き合いをすると、材料サプライヤーとメーカーが手を組み、その間に加工工場、熱処理工場が挟まれている形態をとることが多いです。
すると、メーカーが間の工場をすっ飛ばしてサプライヤーと直接やり取り、知らない間に材料の化学性質、物理性質が変わっていることがあります。

 

変化を加えられたことにより、損失が発生

 

加工工場にとって不利なのが、勝手に変えられた材料を購入拒否する事ができない点。
IATF16949によって変化点管理を求められてはいますが、法律よりも目の前の強い人の方が優先されるのが世の常。

 

メーカーが「申請しなくていい、自分たちが責任を取る」と材料サプライヤーに言い、メーカーが「不良は御社で吸収してください」と加工工場に言うことで、加工工場が苦しい立場に立たされます。(メーカーは結局痛いものが無い)

 

 

損失分の補填を渋られた

 

しかしIATF16949によって変化点管理をしなければいけないと定められているにもかかわらず、メーカー主導で材料サプライヤーに対して変更が加えられ、二社間で情報を握られてしまえば我々にはどうすることもできません。

※IATFのルール解説についてはこちらの記事が分かりやすそうでした。
【IATF16949徹底解説】8.5.6.1 変更の管理-補足|要求事項の解説と解釈(https://bakaryman.org/2022/01/22/8-5-6-1/

 

したがって、発覚した時点からさかのぼって全ての損失分を実費で請求。

「合理的じゃない」という理由で断られました。

 

そこから、

  • 全ての不良情報を開示せよ
  • 刃具情報を開示せよ
  • 加工プログラムを開示せよ

と、実際の損失分を請求するためにもっと高い物を要求されるという、まさにジャイアニズムにより脅され続けました。

 

常に「取引をやめても良いんだよ」というプレッシャー

 

この客先は一癖あって、何か自分たちに都合が悪いことがおこると「それなら私たちも計画を立てなきゃいけませんね」と脅しを入れてくるんですよね。
ここまでの事例全てが下請法に引っかかりそうですが、実際この会社に売り上げを依存している立場からすると、1円でも利益が出るなら切りづらい弱さがあります。

 

株主も売り上げが下がると文句を言うし、社長も工場長も売り上げが下がると文句を言います。
したがって、ババを引いたら上手く関係を切れるまではだましだましやるしかないんですよね。

 

 

真摯な対応を続けて損失を補填してもらった

 

客先は情報開示を強要。
我々は固辞。

3か月にわたる喧嘩の後、損失分の補填をしてもらえました。

 

全てのやり取りをメールの中で行っていたため、すべての人が内容を見れました。
どう考えても客先の方が悪かったので、徐々に我々の側にフォロワーがついてくれました。

 

真摯な対応を続けた結果、権限のある人が「問題なし、補填をしなさい」と決断。
おかげさまで我々の損失はゼロになりました。

 

その代わりに客先からのテスト依頼を格安で対応し、お互いに気持ちよく仕事をする事が出来ました。

 

本件で学んだこと

 

個人の感想ですが、この件で学んだことは非常に多かったです。

  1. 材料をはじめ、5W1Hの変更点は大切
  2. 変化点を見つけたら、「問題なし」を確実に検証する
  3. 客先と喧嘩する時は1対1ではなく、全員に見える場所で
  4. 攻撃し過ぎず、真摯な対応を心掛ける
  5. 普段の仕事の中から、常に人間関係を良くしておく

技術者としては、変化点管理ができていれば合格。

社会人としては、人との付き合い方もできると良いですね。

 

この次のステップは、「YESマン」になり過ぎずに相手と関係を作る方法とかになるんじゃないですかね。

まあ、いい経験でした。
ちなみにこの件が上層部に伝わり、私は会社から大きな評価を頂けました。
お給料とは関係ないですけどね、褒めてもらえるのは嬉しいもんです。

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