【Cpkって何ですか?】品質管理に欠かせない大切な指標の一つ
こんにちは、トモ(@Japan_MFG_Tomo)です。
製造業で量産する場所にいると、いろんな場所でCpkという単語を聞きます。
設計、品質、現場、色んなところでCpkをよりどころにして仕事をしています。
Cpkってよく聞くけど一体何なんですかね?
恥ずかしながら私も3年半日本の大手自動車関連メーカーで勤めていましたが、意味を理解するまでには至りませんでした。
中国に来て、通訳をする際にどうしても知っていないと意味があやふやになってしまうので、思い切って勉強しました。
ちなみにもう社会人6年目です。
▼簡単に言えば、Cpkってこんなもんでした。
不良率が低ければ全数検査しなくていいよね?そのための閾値がCpk
Cpkは「工程能力」と言います。(英語ではProcess Capability Index、中国語では过程能力や工程能力や制程能力なんて言われます。)
kは日本語の「片寄り」から来てますが、大事じゃないので無視。
基本はCpkという単語がある、数値が高いと不良率が低いとだけ認識してればOKです。
- 工程能力が高い=不良品が出にくい工程になっている。
- 工程能力が低い=不良品が出るかもしれない→全数検査を実施
こんな感じで実用されています。
Cpkと不良率の関係はこちらの記事にまとめました。
▶Cpk>1.67とか、Cpk>1.33って何ですか?不良率とはどんな関係?
本記事では以下の事についてお話します。
- Cpk(工程能力指数)の意味を簡単に解説
- Cpk(工程能力指数)が使われる場所
- Cpk(工程能力指数)を使うと起こる良い事
- Cpk(工程能力指数)の良し悪しを判断する基準
- Cpk(工程能力指数)が良いと何が良い?
- Cpk(工程能力指数)を調整するためにできる事
- Cpk(工程能力指数)Cpk(工程能力指数)を短期、長期で見る理由
- 工程が管理状態にあるのかどうかを確認する手段
私は今後もものづくりの中で生きて、日本のものづくりを後世に残すために生きていく覚悟を持っています。
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Cpk(工程能力指数)の意味を簡単に解説
Cpkとは、「工程能力指数」といって、工程がどれだけの能力を持っている(=良品をどれくらい安定して作れるか)を統計学を活用して表現する方法です。
よく聞く数字の中に
- Cpk=0.67
- Cpk=1.00
- Cpk=1.33
- Cpk=1.67
なんてものがあると思います。
数字が大きければ大きいほど品質管理状態が良く(要求された公差内に収まる確率が高い)、製品コストと使用者の生命に関わる度合いからCpkを大体1.33か1.67くらいに設定する事が多いです(自動車業界の場合)
Cpkの値がこんなに中途半端な理由は、分母を3σにした時の分子の大きさがいくつかを表しているからで、これを3σ法と言います。
(σは標準偏差を表していて、手計算すると大変なのでExcelで「stdev」を使って計算します。)
この辺の細かい計算の方法はQC検定2級で深く勉強できるので、よかったら勉強してみてください。
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このCpk、何が便利かというと不良品の起こる確率を予測できるんですよね。
以下の表を見てみてください。
Cpk=1.33を満たしていると、不良品の確率が100,000個中6個、材料ロット1つ分に6つの不具合が出るイメージです。
故障しても命に関わらない部分では1.33を採用する事が多いです。
次にCpk=1.67あると、不良品の確率が1000万個中の6個になるので、ほぼ不具合起こんないですよね。2~3年に6個の不具合です。
命に関わる部品を工程管理する時はこの辺りを狙います。
そしてもっと大切な部分は全数検査指示がされます。
Cpkを簡単に表すとこんな感じです。
不良品発生の割合をどの範囲に抑え込みたいかという指標。
こんな雰囲気が理解出来たらスタートラインです。
Cpk(工程能力指数)が使われる場所
Cpkが使われる場所は多岐にわたります。
量産工程ではどこかで絶対使われてるんじゃないですかね。
「その工程の能力が規格幅に対してどれくらい収まっているか」の程度を知るときにCpkを使います。
「ある範囲の中にばらつきが収まっていないとクレームにつながる」と言った場合に、活用します。
例えば自動車部品、機械要素、電化製品等の量産部品に対する図面や企画に対する品質
例えばジュースやお米やお菓子などの内容量に関する品質
こんな時は工程管理をして、適度なレベルにコントロールします。
ちなみに使おうと思えばパチスロの設定判別にも使えます。
何ゲーム目に小役を引いたか、何ゲーム目に大当たりを引いたかなどを逐一表に入れていき、そのばらつきの度合いから確率変数を使って設定推測をします。
Cpk(工程能力指数)を使うと起こる良い事
Cpkを使うと起こる良い事は、例えば以下の3つがあります。
- データをもとに自信をもって全数検査を削除できる
- 過剰品質の部分の品質を落として、加工時間短縮案の材料にできる
- 全数検査工程に入る前に不具合を見つけられるので、無駄が減る
従来は経験と勘とハッタリでやってきたものづくりを、データを活用して統計的に話ができるようになります。
中小企業が大企業に潰されないためには口げんかが必須になりますが、データを使った説明はその時の武器になります。
なので私は勉強をしています。
Cpk(工程能力指数)の良し悪しを判断する基準
Cpkの良し悪しを判断する基準は、その工程の不良がどれくらいの損害を生むのかによって決定します。
- 不良品=命の危険になる場合はCpk=1.67以上、5σ
- 不良品=性能不良になる場合はCpk=1.33以上、4σ
- 不良品=クレームになる場合はCpk=1.00以上、3σ
みたいな気持ちを込めて、設計が決めます。
Cpk(工程能力指数)が良いと何が良い?
Cpkが良いと何が良いのか、答えは以下の3つです。
- 工程が管理状態になっているので、不良数をコントロールできる
- 不良品が少ないので検査しなくても大体合格品
- 確率的に不良数が分かるので、ロットから抜き取り検査をすれば十分
「不良品が少ない」ことと「不良数が確率的に計算できる」のが大きな利点です。
Cpk(工程能力指数)を調整するためにできる事
Cpkを調整するためにできることは、以下の3つが大きいかな?
- 加工条件を適切にする
- 工具を最適化する
- 環境を最適化する
少し深掘りします。
なお、加工条件や工具の種類についてはこの辺の記事が参考になるかもしれません。
加工条件を適切にする
加工条件を調整すると、ある程度品質を調整できます。
- 回転数
- 送り
- 切込量
加工時間を短い方に調整→Cpkが下がる
加工時間を長い方に調整→Cpkが上がる
こんな感じで調整していきます。
過剰品質になっている部分のCpkを落として、品質が足りない部分のCpkを上げる方に調整すれば、加工時間を保ちながら品質調整ができます。
工具を最適化する
加工条件で対応しきれない時は、工具も考慮に入れます。
- 形状
- 材質
- コーティング
などが選択肢になります。
工具形状は、Rの大きさ、すくい角逃げ角、切粉排出性などをいじる事で品質調整できます。
材質によって耐熱温度が変わるので、回転数を上げたい場合は材質をいじる必要があります。
コーティングによって摩擦や構成刃先の出来やすさが変わります。
環境を最適化する
他にも調整できるものはあります。
- 切削油
- 主軸温度
- 室温
等を調整すると品質が変わります。
例えばジグボーラーで加工するものは精度が要求されるのでエアコンの効いた部屋で加工します。
切削油は切削の場面ではあんまり話題に上がらないですが、油なのか水に溶けるのかで切削抵抗が変わるので品質に影響します。
切削油についてはこちらの記事で少し触れてます。
一般的な考え方
Cpkは上限(または下限)と平均の差を標準偏差の3倍で割ります。
Cpk=(UCL-μ)/3σ、または(μ-LCL)/3σのうち、小さいほう
計算式からわかるのは、
- 偏りを中心に寄せる
- ばらつきσを小さくする
- 公差緩和を検討する
ことでCpkを上げられるという事。
設計の段階ではこの辺りを争点にお客さんと議論します。
Cpk(工程能力指数)を短期、長期で見る理由
Cpkは、短期と長期、両方とも確認する事が必要です。
理由は材料や作業員のレベルのバラツキによる変化を考慮したうえで品質を守らなきゃいけないから。
短期のCpkでは、現状の能力をタイムリーに知る事ができます。
しかし短期のCpkが高い=長期のCpkも高い事にはなりません。
短期間のCpkで品質を証明できるなら、短期間だけ1軍メンバーが戦い、終わったら2軍で生産する事もできちゃいます。でもこれじゃ品質は守れないですよね。
こんな感じで長期の工程能力指数を確認する理由は
- 材料ロットの変化
- 季節性の変化(温度や湿度など)
- 人員の習熟度
が製品に及ぼす影響を考慮したうえでの品質確保をするためです。
工程が管理状態にあるのかどうかを確認する手段
工程が管理状態にあるかどうかを確認する手段として、よく使われるのはX-R(ほんとはXの上に―がついて、Xバー)管理図です。
工程能力を確保して一旦工程を作り込んでから、その工程のレベルが変化していないかを定期観察するために管理図を活用します。
工程能力の計算は、一度作り上げた後も半年や1年に一回など、定期的に行います。
したがって工程能力評価は人間ドックや定期健診みたいなもの、管理図による管理は日々の血圧や体温測定のようなものと表現されることが多いです。
Cpkって何ですか?まとめ
Cpkとは、抽象的に言うと色んな意義があります。
- 全数検査の工程を減らすために、生産ライン内で品質を作り込むための指標
- 不良品をどこまで許容できるかという、設計者の意図
- 品質改善やコストダウンにつなげるための数値的根拠
こんな意義があります。
材料を仕入れて加工するだけだとただの下請けやさんになってしまいます。
これだと競争力が足りず受注につなげにくい事と、せっかく受注しても不良品だらけで赤字になってしまいます。
データを適切に活用して机上の論理である程度問題を解決できるようになるだけでまだまだ戦える余地がたくさんあるので、勉強しておくと後々必ず役に立つはずです。
それでは今回はここまで、最後までお読みいただきありがとうございました。
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