【技術士キーワード学習】Ⅰ:エネルギー需給問題
我が国のエネルギー需給の現状
2011年の福島原発の事故により、原子力発電が電源構成に占める割合が低下したため、火力への依存度が高い。
2019年現在では、石油7%、石炭32%、天然ガス37%と、80%以上の電源が火力発電由来となっている。
我が国のエネルギー需給の問題点と課題
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再生可能エネルギーの主電源化および発電量の向上
2011年の福島原発の事故の影響から、我が国では原発を忌避する世論が強くなっている。一方でエネルギー安全保障や地球環境の立場から、火力発電への依存度を低下させる必要がある。
したがって電力確保の観点から、クリーンなエネルギーを増加させるために、再生可能エネルギー(以下、再エネと略す)を主電力化し、発電量を向上することが課題である。
原子力発電設備の安全確保
我が国の国土面積および発電効率の関係から、全ての電源を再エネで賄うことができず、ボトムアップとしてのベースロード電源が必要である。
現在、我が国のベースロード電源として、主に石炭由来の火力発電を採用している。しかし石炭火力発電は、化石燃料の燃焼によって発電を行うことから、CO2を排出するため、将来的に割合を減らし、徐々にフェードアウトしていくことが必要である。
したがって電力供給の安定化の観点から、原子力発電を普及するために、考えられるリスクにおいて原発の安全を確保することが課題である。
省エネルギーの推進
我が国の再エネ方針は、設置面積を多くとれる太陽光発電がメインであり、次点で水力や風力による発電を戦略に据えている。
しかしこれらの電源は自然環境に左右される変動電源であるため、常に最大の発電量を得られるわけではない。
したがって需要のピークを抑える観点から、バックアップとなる火力発電の稼働頻度を減らすために省エネを推進することが課題である。
最重要課題
近年では、ロシアのウクライナ侵攻に伴いエネルギー価格が高騰していること、
自動車のEVシフトによる電力需要の増加等で、原子力発電10基分相当の電力が不足すると言われている
(自工会 豊田会長「すべてEV化ならピーク発電10~15%増必要」…性急な電動化論に危機感 | レスポンス(Response.jp))こと、
フランスでは原子力発電の割合が69%あるなど、CN達成のために他国でも原発の需要が強いことから、我が国も原発の新設および再稼働が必要と判断し、「原子力発電設備の安全確保」を最重要課題と考える。
最重要課題の解決策
事故やテロに強い設計
従来の原発安全基準から厳格化し、万が一地震や津波が発生しても事故が再発しないことや、テロが発生しても原発事故につながらない設計とする。
小型モジュール炉(SMR)の普及
福島原発の事故では、津波により原子炉を冷却する機能が失われたことでメルトダウンが発生した。
SMRは小型であることから冷却性に優れており、空気だけで冷却できることから非常時に電源や追加の水を必要としない。
また、部品をモジュール化し、組み合わせ構造にすることで材料費のコストダウン、建設時間の短縮につながり、エネルギー価格を低減することができる。
核融合炉の開発
核分裂反応により発電する従来の原発ではなく、核融合による発電を行う核融合炉の開発を推進する。
- 核融合炉では、核分裂反応が無いため、暴走が原理的に生じない。
- 高レベル放射性廃棄物が発生しない
- メルトダウンしない
- 燃料1グラムで石油8トンを燃やした時と同じエネルギーを得られる
といったメリットがある。
解決策による効果
新しい安全基準を満たした原発や、物理的にメルトダウンしない核融合炉によって、安全なベースロード電源を得ることができる。
波及効果
余剰した電力を用いて水を電気分解することで水素を得たり、この水素を用いてメタンを生成することで、化石燃料由来でない燃料を得ることができるようになる。