【技術士キーワード学習】Ⅰ:イノベーションのジレンマ

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イノベーションのジレンマについて

大企業にとって、自社の持つ技術が成熟し魅力的であるため、

  • 新興の技術は魅力的に映らない
  • 新興技術が自社の既存技術を破壊する可能性がある

等の理由により、新興市場への参入が遅れる傾向にある。

 

例えば、高いカメラ技術を持っているメーカが、自社のフィルムカメラが売れなくなることを危惧してデジカメへの切り替えが遅れ、気づいたころには手遅れになってしまっていたことが挙げられる。

 

近年では、高いエンジン技術を持っている自動車メーカが、自社のエンジン自動車が売れなくなることを危惧してEVへの切り替えが遅れる事例があったが、この場合はEVのバッテリーに関する種々の問題(バッテリー価格、レアメタル、爆発、充電渋滞等)により、PHEVへの転換、合成燃料車の開発、水素自動車の開発など複数の解決策が提示されている。

 

自動車の性能指標とその変遷、および今後の動向

自動車の性能は、加速までの時間の短さ、トルク、排気量等で評価されてきた。

近年では、ものづくりからコトづくりへの変遷により、自動車により得られる体験に価値を感じる場面が増えている。
それに伴い、自動車の性能は空間の広さ、事故防止機能、スマートフォンとの連携等により評価されることがある。

今後の動向としては、AIとの連携、自動運転技術等が評価の対象になると考えられる。

 

課題と問題点(課題を遂行すべき解決項目)

自動車としての性能

自動車を「人や物を運搬する道具」と捉えた場合、自動車としての性能は積載能力、スピード、振動特性等、物理的な数値として表すことができる。

技術の観点から、自動車としての性能を向上するために、物理的な数値を改善することが課題である。

 

体験価値としての性能

自動車を「生活空間」としてとらえた場合、自働車としての性能は車内の空間の広さ、乗り心地、通勤やレジャーなどの多用途への利用のしやすさ等、感覚的に表現される。

コトづくりの観点から、感覚で表されるユーザのニーズに応えられるように、調整機構を設けることが課題である。

 

環境側面での性能

2016年のパリ協定以降、世界では脱炭素の動きが活発になっており、我が国では2030年までに2013年度比46%のGHG排出削減を宣言している。

環境の観点から、地球温暖化への対策として、自動車の材料調達から製造、使用までのライフサイクル全体でCO2排出を削減することが課題である。

 

最重要課題

近年では、自動車のEVシフト、電源の脱炭素化など、環境側面でのイノベーションが起こっている。このことから、我が国の自動車産業を持続可能な産業とするためには環境への対応が必要だと判断し、「環境側面での性能」を最重要課題と考える。

 

現状技術と応用分野・解決策

水素燃料の利用

水素エンジン車、水素燃料電池車を普及し、自動車のCNを達成する。

また、燃料を天然ガスや石油から水素ガスへ転換することで、加熱工程を脱炭素化、工場で使用する電源を燃料電池による発電や、水素タービンによる火力発電にすることで、製造工程から使用まですべての工程で脱炭素化する。

 

CO2回収技術の利用

化石燃料の燃焼により発生する以上のCO2を回収することで、カーボンマイナスを目指す。

回収したCO2を水素と反応させて合成燃料を作る「メタネーション」や、回収したCO2をコンクリートの形で固定するCCU、回収したCO2を地中に埋めるCCS技術により、既存の化石燃料の使用によるCO2の排出をトータルでゼロにする。

 

メタネーションで作られた燃料を加熱、発電、自動車の動力として使用する場合、もともと大気中に存在したCO2が大気中に戻るだけなので、CNであると考えられる。

 

再生可能エネルギーの利用

自動車をEV化する。

また、生産時に使用するエネルギーを電化し、蓄電池の普及と併せて、再生可能エネルギーを推進することで、自動車に関係するエネルギーをCNにする。

再生可能エネルギーは発電量を調整することができないため、余剰分は蓄電池へ蓄電するか水素化して貯めておき、需要が供給を上回った際に使用することで、エネルギー需要のピークシフトを行う。

 

我が国では、再生可能エネルギーの候補として太陽光発電、洋上風力発電、地熱発電などが存在するが、国土面積の関係から、発電量は十分ではない。

その解決策として、以下の2点を提案する。

1.発電量の増加

太陽光発電に使用するパネルを改善し、発電量を増加させる。
現状最も発電効率が良いシリコン系のソーラーパネルは、発電効率が最大で29%程度とされている。

現在開発中のペロブスカイト系ソーラーパネルは、発電効率が現状で22%程度ある。
さらに、薄型で安価に製造でき、曲面にも設置可能であることから、設置面積を増やすことで、現状よりも多くの電力を得る。

 

2.省エネとの組み合わせ

省エネによりエネルギー需要を低減させることで、他の部門における必要な電力を抑えて対応する。

方法の例として、以下に5点挙げる。

  • ボイラーのヒートポンプ化
  • 照明のLED化
  • 省エネ機器への買い替え(トップランナー制度の活用)
  • 機械機器の使用効率の向上(大型設備から小型設備の組み合わせへ)
  • 断熱性能の向上によるオフィスでのエアコン使用の抑制

 

技術効果と成果

自動車を脱炭素エネルギーで走行可能にすることで、自動車の環境性能を向上することができる。

 

波及効果

自動車の脱炭素技術を他の業界にも活用することで、CNに貢献することができる。
例えば住宅では、燃料の水素化、電化等により、消費するエネルギーを脱炭素化し、家庭部門でのCNを達成することができる。

 

懸念事項

エネルギーを転換することで、思わぬ事故や不具合に繋がる事が懸念される。

たとえば、従来のガスを水素に置き換えることで、配管の腐食が発生し、水素が漏れ出し引火すると、火災の原因になることが考えられる。

 

懸念事項の対策

配管をステンレス化する。また、交換しやすい部品を敢えて腐食しやすい材質に変えることで、他の部分の腐食を防ぐ「犠牲アノード」により、腐食しやすい部分の部品交換だけでメンテナンスを完了させ、メンテナンスのコストを下げる。

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