【技術士キーワード学習】Ⅲ:マルチマテリアル
マルチマテリアル化の現状
マルチマテリアルとは
異種材料の組み合わせにより機能性を向上する技術のことである。
適材適所に組み合わせることで、単一の材料では実現できない「総合的に優れた特性」を持たせることができる。
例えば、CFRPは自動車のボディ軽量化に使われれるが、コストが高いため、適用先が一部の高級車に限定される。
この問題を克服するために、マルチマテリアル化によりアルミニウムとCFRPを適材適所で組み合わせることで、軽量化とコスト削減の両立が可能となる。
CFRPの密度は1.6g/cm3で、同じ体積であればアルミ合金2.8g/cm3の6割程度、鉄の2割程度の重さであるため、非常に軽量であることが分かる。
マルチマテリアルが進む分野
マルチマテリアル化が進む分野として代表的なのが自動車である。
CO2削減のために、車体の軽量化による省エネ化が進んでいる。
現状では、ボディ等車体の大きな部分に使用される鉄材をハイテン材に転換することで薄肉化し、軽量化が進んでいる。
更なる軽量化として、比重が鉄材の3分の1程度であるアルミニウムを使用したり、CFRPやマグネシウム合金を使用したりする開発が進められている。
マルチマテリアル化の問題点と課題
材料の強度
ハイテン材から軽量化を求めてアルミ合金やCFRPに変更する場合、強度が十分でなく、衝突安全性が低下する可能性がある。
したがって、構造の観点から、万が一の事故が発生しても人体の安全を確保できるように、材料の強度を確保することが課題である。
接合技術
異種材料を接合する場合、例えば異種金属の場合は腐食の問題が発生したり、強度の異なる部品同士を機械接合する場合は弱い材料が摩耗する等、経年により性能が劣化する可能性がある。
したがって信頼性の観点から、製造から長時間が経過しても性能を保証できるような接合技術を採用することが課題である。
リサイクルと廃棄物管理
軽量で腐食しづらく、強度がある材料を求めると、添加物としてレアメタルの使用が増える可能性がある。
レアメタルは採掘および製錬の過程で環境負荷が大きいため、地球環境汚染が懸念されている。
したがって環境の観点から、使用した材料を適切に管理し、リサイクルを進める、サーキュラーエコノミーの仕組み作りが課題である。