板金加工の種類について【技術士キーワード学習】
参考:板金加工とは?手板金・機械板金と板金加工の工程について解説 (monoto.co.jp)
板金加工の種類
手板金
手作業による板金加工のことである。精密部品など複雑な加工や、自動車の補修など一点ものの加工を行う。
手板金の種類:打ち出し板金
板金をハンマでたたきながら成型する加工方法のことである。
手板金の種類:曲げ板金
曲げ機など、汎用の機械を使って成型する方法である。自動化が難しかったりコストメリットがないものを加工する時に用いられる。
手板金のメリット
専用のハサミやハンマなどを用いて、機械では難しい複雑な加工を行うことができる。
手板金のデメリット
人の手で行うため、加工時間が長く、大量生産に向かないことや、製品単価が高くなることがある。
機械板金
金型を使って成型する板金加工のことである。
機械板金のメリット
大量生産や自動化をすることができるため、多量生産の場合はコストダウンにつながる。
機械板金のデメリット
複雑な加工は金型の製造が困難になるため、対応しにくい。
板金加工の流れ
図面展開
板金加工の出来上がり図面に対して、展開図を作成する。
注意点として、寸法が伸びるため事前に伸び量を考慮して図面展開を行う必要がある。
切断
板材から、出来上がり図面の展開形状に切断する。シャーリングマシン、レーザ加工機などを使用する。
抜き加工
完成品の穴を、曲げる前に加工する。タレットパンチプレスなどを使用する。
バリ取り
曲げ加工後に仕上げると工数がかかるため、曲げ加工前に切断面に発生したバリを処理する。
曲げ加工
ベンディングマシンを使用して曲げ加工を行う。材料の弾性によってはスプリングバックが発生することに注意する。
- L曲げ…板金材の一方を抑え、他方を押し込み曲げる
- U曲げ…板金材の中心部を押し込むと、両端が起きて曲げる
- V曲げ…ダイのくぼみに合わせて押し込み曲げる
- 絞り…継ぎ目のないくぼみを作成する
溶接
板金同士の接合を行う。素材が薄かったり、溶接個所が多くなったりするとひずみが起こりやすくなることに注意する。
仕上げ・表面加工
加工時に発生した表面の凹凸を処理したり、表面の傷を補修したりして仕上げる。最後に塗装やメッキなどの表面処理を行って完成品となる。
板金加工で使用する設備について
抜き・切断加工に使う設備
レーザ切断機
切断に使用する機械である。
金属材料に高出力のレーザを照射して局所的に溶融させ、融けた金属をガスで吹き飛ばして切断する。
長穴加工や切断する周長が長い加工を得意とする。
デメリットは、せん断に比べて加工スピードが劣る。
シャーリングマシン
板材をせん断する機械である。
原理ははさみで紙を切るのと同じで、ダイで下側を固定し、パンチで切断する。
塑性変形の間に、切断面の上部が押し込まれ、R形状(ダレ)が発生し、切断面の下部は引きちぎられたような尖った形状(バリ)が発生するため、後工程で除去する必要がある。
切粉が発生しないこと、素材が熱により変形・変質しないこと、加工が速いことが特徴である。
タレットパンチプレス
打ち抜き加工に使用する機械である。
タレットと呼ばれる金型ホルダに小さな金型を取り付けて、板材を高速でプレスして打ち抜く。
曲げ加工
ベンディングマシン…ベンダー、プレスブレーキともいう。
切断した板材に圧力をかけて曲げる。
装置上部にオス型のパンチ、下部にメス型のダイを取り付け、上から下に向けて圧力をかけて曲げ加工を行う。
溶接加工
レーザ溶接機
レーザを使った溶接を行う機械である。
レーザ溶接は溶け込みが補足、熱による影響を受ける部分が小さいためひずみにくい。
TIG溶接機
アーク溶接の一種で、一般的に用いられる。
不活性ガスとしてアルゴンを使用するためアルゴン溶接と呼ばれることもある。
電極に高圧の電気を掛けて金属を溶融させて接合するため、気密性が高く溶接強度が高いが、熱の影響を受ける範囲が広いため製品に大きなひずみが生じやすい。
板金加工のメリットとデメリット
板金加工のメリット
プレス加工では多量生産を行うことでコストメリットを出すが、板金加工では抜き・曲げ・溶接など、どの工程も汎用的な設備を使用するため、少量多品種や設計変更に柔軟に対応できる。
板金加工のデメリット
部品を一点ずつ加工するため、同じ部品を大量に作る場合は生産に時間が掛かる。溶接は職人技に頼る部分が大きいため、品質と製作時間にばらつきが出やすい。