有識者が出社できない場合について【技術士キーワード学習】

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有識者が出社できない場合について

少子高齢化に伴う労働力人口の減少により余剰人材が確保できないことや、コストダウン圧力による省人化により、業務に対する一人の有識者への依存度が高くなっていることに加えて、感染症の拡大、グローバル拠点への出張、テレワークの推進などにより、その有識者も常に出社するとは限らない状況になっている。

 

有識者が出社できない場合の、求められる姿

万が一問題が発生した際にも的確に問題解決ができるように、有識者が出社できない場合を想定した業務の仕組みを構築する事が必要である。

 

有識者が出社できない場合についての問題点と課題

多面的な観点から、有識者が出社できない場合の問題点3つ

 

異常発生時の代理担当者による処置

方法の観点から、従来有識者の立会いの下行っていた異常発生時の処置を、有識者の遠隔サポートや異常処置作業指示の自動化により、代理の担当者が遂行できる仕組みを作る必要がある。

 

次世代の有識者の育成

人材の観点から、経験や判断力に長けた有識者の技術を次世代に伝承する事で、一人の有識者が出社できなくても代理の技術者によって対応できるようにする人材育成が必要である。

 

有識者への情報共有

情報の観点から、有識者が出張やテレワークなどで現場に足を運ぶことができない場合でも前後の情報を分析して判断の材料とするために、有識者とリアルタイムで情報を共有できるようにする必要がある。

 

最重要課題

我が国では標準化により基本的な技術の伝承が容易に行える土壌があり、有識者の意見が必要な状況は異常発生時であることが多いことから、「異常発生時の代理担当者による処置」を最重要課題と考える。

 

最重要課題の解決方法

ICTを活用した情報収集と作業指示

生産設備をIoT化し、センサの情報をリアルタイムで確認できるようにする。異常発生時はセンサで収集されたデータと、Webカメラとオンライン会議サービスを活用して現場の映像を有識者と共有し、代理の担当者に作業方法を指示する事で、有識者は非現場環境から三現主義に近いデータを遠隔で収集し、次の対策方法を判断できるようにする。

 

AIを活用した異常の予知と通知

センサから収集された設備のビッグデータをAIによって分析し、異常の兆候を管理部門へ通知する事で、異常が発生する前にあらかじめ対策を行えるようにする。異常発生前であれば時間に余裕を持ち、有識者を含めて事前に対策を検討する事ができるようになる。

 

異常処置方法の検索容易化

既に経験した事のある異常であれば、過去の経験から処置を行うことができる場合がある。過去の異常処置方法を手順書化、およびデータベース化する事で、発生した異常に対する処置方法を検索しやすくし、手順書通りに作業を行えるようにする。また、検索時はAI技術を活用し、表現の揺らぎや類似の現象を含めて検索することで、幅広いデータを検索できるようにする。

 

解決策による波及効果と懸念事項

解決策による波及効果

デジタル技術を活用し、技術を検索できる情報として保存したり、有識者と遠隔で繋がったりすることで、有識者の出社を前提としない働き方を実現する事ができる。これにより、万が一有識者が出社できない場合でも対応方法を検討する事ができるようになる。

 

解決策により新たに生じる懸念事項

上記解決策では生産設備のデジタル化を前提としているが、製造現場を一度にデジタル化する場合は多額の投資が必要となり、中小企業など体力の無い企業では導入が困難となる可能性がある。

 

懸念事項の対策

デジタル化に関する補助金を活用する。IT導入補助金では、故障の予知を目的とするセンサをはじめIoT機器の導入に対する補助金が展開されている。これを活用する事でデジタル投資を行う事で対策する。

 

将来展望について

労働者人口減少や、企業のグローバル化などにより、今後も技術者一人当たりの業務負荷は増大する事が考えられる。一人の技術者が複数の現場における問題解決に携われるようにするためには、このようなデジタル技術の活用は有効であると考える。

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