CPS(サイバーフィジカルシステムズ)について【技術士キーワード学習】
CPS(サイバーフィジカルシステムズ)について
CPS(サイバーフィジカルシステムズ)とは
現実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワークなどで収集し、仮想空間(サイバー空間)で分析し、現実世界へフィードバックする事で最適化する仕組みの事である。現実世界のデータや情報の一部を意図的に変更し、仮想空間内でシミュレーションを行うことで、問題点の原因究明や、最適な手法・手段やスケジュール策定に応用する事ができる。
CPS(サイバーフィジカルシステムズ)の活用事例
製造ラインの人員や製品置き場の最適化
CPSによって仮想空間に工場を再現し、AGVのオペレーションをシミュレーションする事で、既存ラインでの人員や製品置き場の最適化をサイバー空間上で検討し、現場での試験時間を短縮する事ができる。
今後起こり得る将来の予測
変種変量生産対応における効率的な生産を行うために、工場の全工程のスケジュールや条件をリアルタイムで最適化する必要があるが、CPSを活用し、現在のラインの状況と、次に加工予定の製品に関する過去の作業履歴をもとに未来予測を行い、生産スケジュールの乱れやライン停止を未然防止する事ができる。
参考:「製造業に影響を与えるCPS(サイバーフィジカルシステム)とは?概念から活用事例まで紹介」ソリューション・エクスプレス|三菱電機ITソリューションズ (mdsol.co.jp)
CPS(サイバーフィジカルシステムズ)の、求められる姿
実世界とサイバー世界を組み合わせることで工場のオペレーションを最適化し、変種変量に対応できる工程を設計する。
CPS(サイバーフィジカルシステムズ)についての問題点と課題
多面的な観点から、CPS(サイバーフィジカルシステムズ)の問題点3つ
現実空間の再現から分析及びフィードバックまでの環境構築
技術の観点から、CPSを正確に運用するために、リアルタイムな情報の収集、現実空間の再現、分析とフィードバックを行うプラットフォームの構築が必要である。
シミュレーション誤差要因の低減
オペレーションの観点から、シミュレーション結果を現実世界にフィードバックし、結果を再現する際の誤差要因を減少させるために、サイバー空間内に現実世界の情報を正確にインプットすることが必要である。
CPSを活用するデジタル人材の確保と育成
人の観点から、CPSの運用には従来とは異なる高度なデジタル知識を必要とするため、デジタル人材の新たな確保と教育、および既存社員のデジタルへの対応のためのリスキリング教育が必要である。
最重要課題
CPSの運用によって高い付加価値を提供するためには、常に仮想空間内の情報の正確性を維持する事が必要であることから、「シミュレーション誤差要因の低減」を最重要課題と考える。
最重要課題の解決方法
人の動きの推定
シミュレーションの中で最も予測が困難なものの一つに人の動きがある。人の違いや時間の違い、体調の違いなど、様々な要因によって動作の仕方や速度にばらつきがある。したがって、CPSの中でシミュレーションを行う際に、人の動きに関するデータをセンサによって収集し、AIによって人の動きの予測範囲を推定して、サイバー空間へインプットする。
リアルタイムな物の置き場の把握
中間在庫やメンテナンス作業時の工具など、状況によって工場内の空間が変化するため、パレットや工具台車などにビーコンやRFIDを導入し、リアルタイムに物の位置を取得できるようにする。
運転状況を把握するための信号のやり取り
CPSを導入する際には、生産設備と人のオペレーション最適化だけではなく、自動搬送装置との組み合わせが予想されるため、各設備から運転状態の信号を発信し、サイバー空間と情報を共有できるようにする。
解決策による波及効果と懸念事項
解決策による波及効果
上記解決策によりリアルタイムな人と物の情報をサイバー空間に提供する事で、シミュレーションの精度を向上させ、現実世界へフィードバックする際の誤差を小さくすることができる。
解決策により新たに生じる懸念事項
CPSの運用には、あらゆるものをネットワークにつなぐことを前提としている。実際にCPSを狙ったサイバー攻撃の被害も発生しており、悪意のあるアクセスによって生産システムがダウンしてしまう可能性がある。
懸念事項の対策
CPSに対するセキュリティを導入し、異常が発生した際にネットワークを遮断し、データの書き換えなどの被害を受ける前に対応できるようにする。