【技術士キーワード学習】Ⅰ:火星での実現可能性調査(R4-1-1)
問題文の整理
地球上での使用を前提として製品化された機械を、火星の環境で使用するための実現可能性調査を行う。
実現可能性調査…フィージビリスタディ(Feasibility Study)、プロジェクトの実施前に、それが実現可能かどうかを調べること。
今回の場合は、地球から火星へ機械部品を持って行く前に、実現可能かどうかを調べる。
表から読み取れること
- 地球から火星までは遠い。
公転周期により一番距離が近いときで、100kmの移動を50万回行う程度の距離。遠いとその8倍。 - 火星の体積は地球より小さい
地球の赤道半径は6300km程度。火星の2倍くらいある。 - 火星の重力は地球よりも小さい
地球の重力は81m/s2 - 火星の自転周期は地球とほぼ同じ
- 火星の温度は常に氷点下
K=-273+℃のため、火星の温度は-89℃~-31℃ - 火星の大気圧は、地球よりもかなり低い。
地球の大気圧は101kPaであるため、1/200程度 - 火星には二酸化炭素の割合が高い
1%が二酸化炭素
想定する機械製品
地球上での使用を前提として製品化された機械として、自動車を例に挙げて記述する。
課題と問題点(課題を遂行すべき解決項目)
火星の現地での組み立て
地球と火星の距離が遠いため、頻繁な往来は困難である。
また、二星間を移動するには宇宙船を使用するが、容積に限りがあるため、小型化、軽量化して発送する必要がある。
したがって輸送の観点から、自動車を完成品ではなく、アッシー単位で発送し、現地で組み立てる方法の確立が課題である。
飛来物の激突に耐えられる強度の設計
火星の重力は地球の半分以下であり、強い風と相まって、地球上で風により飛来する砂や石等の3倍の大きさや重さの石や岩が飛来してくることが考えられる。
したがって強度の観点から、これらの飛来物が自動車に激突しても安全や性能を確保できるような設計をすることが課題である。
内燃機関を用いない動力の確保
火星には酸素が少ないため、内燃機関では燃料が十分に燃焼しないことが考えられる。
したがって動力の観点から、内燃機関を用いない動力によって、自動車を駆動できるようにすることが課題である。
最重要課題
自動車は、物資の運搬、人々の移動など、日常的な用途で用いられる。
地球上と同じように信頼性のある稼働をできるように、故障しないことが重要と判断し、「飛来物の激突に耐えられる強度設計」を最重要課題と考える。
最重要課題の解決策
外面の材質の最適化
自動車のボディに使用する材料を強度のある材料にする。
アルミや薄いハイテン材等から、強度のある鋼材、セラミックなどを組み合わせた複合材料を選定し、飛来物が衝突しても壊れないようにする。
最適材料はマテリアルズ・インフォマティクスによって候補を挙げ、衝撃試験によって評価して改善する。
タイヤ材料の最適化
火星上は宇宙線によりゴムが劣化することが考えられる。
したがって宇宙線によって劣化しないように、タイヤを鉄系材料で製造する。
この際に、タイヤの摩擦力を確保できるような溝の形状を切削加工等によって実現する。
また、鉄系材料の場合、弾性がゴムよりも劣り、凹凸の激しい悪路の走行によって変形することが考えられるため、シャフトからタイヤまでを交換しやすいようにモジュール設計する。
振動性能の最適化
火星では、地球上のように道路を舗装されていないこと、更に上記のように鉄系材料のタイヤを使用する場合、ゴムのように衝撃を吸収しないため、自動車を構成する部品のねじが外れることや、部品自体が変形することが考えられる。
また、搭乗者へ振動が直接伝わるため、乗り心地が低下する。
したがって、ダンパ等を用いて、タイヤの近くで振動を吸収し、自動車全体に直接振動が伝わらないようにする。
技術効果と成果
解決策により、火星の環境下でも自動車の走行が可能となる。
懸念事項
砂嵐が吹きやすい環境の中で自動車を運転すると、周囲の把握が困難になり、現在地を見失うことや、大きな穴に入り込んでしまう事故が発生することが懸念される。
懸念事項の対策
センシング技術により、人間の目に頼らずに走行できるようにする。
方法として以下に2点挙げる。
- ドローンを用いて火星全体の地図をマッピングし、走行スピードやハンドルの方向などからベース地点からの座標を割り出すことで、現在地を把握する。
- 火星の路上に磁気テープを敷設し、その上を走ることで現在地を把握する。