電力のレジリエンス【技術士キーワード学習】
電力のレジリエンスについて
電力のレジリエンスとは
参考記事:電力レジリエンスの重要性・課題や解決策とは? | リンキット (access-company.com)
電力供給の危機や逆境に対する抵抗力と回復力を表す。近年、台風・地震・水害などの自然災害が頻発・激甚化する傾向にあり、災害しても大規模な停電が発生しづらい構造や、被災後の早期復旧への取組が必要なため、2020年に「エネルギー供給強靭化法」を制定し、政府としても電力のレジリエンスを重視している。
電力のレジリエンスの、求められる姿
自然災害が発生しても、安定して電力を供給することが求められる。
電力のレジリエンスについての問題点と課題
多面的な観点から、電力のレジリエンスの問題点3つ
復旧作業の連携強化
作業の観点から、被害発生時に電源供給事業者が連携して復旧作業に従事することや、電力会社または公的機関からの被害状況及び復旧予測の情報発信、自衛隊や自治体と連携した倒木の処理、電源車の派遣場所の効率化等が必要である。
送配電網の強靭化
事前準備の観点から、老朽化している既存の送配電網の更新と、災害発生時の地域を跨いだ電力の融通ができる仕組みになどによって、災害時に送配電網の遮断が起こる事や長期間電源の確保ができないといった被害を予防する必要がある。
分散型電力システム
対象範囲縮小の観点から、分散型の電力システムを導入し、火力発電などの大規模発電設備からの電力供給が困難になった際でも各地域で発電量を賄って対応する。
最重要課題
2019年の台風15号では、鉄塔の倒壊や倒木等による設備の損傷が激しく、復旧までに16日を要しており、既存の送電線網の脆弱性が顕在化したと考え、送電線網の強靭化を最重要課題と考える。
最重要課題の解決方法
再エネ等自家発電の強化、電力系統の双方向化、AIやIoTを用いた運営によってレジリエンスを強化する。
再エネ等自家発電の強化
再エネ電源を強化し、発電所が被災した際にも電源を確保できるようにする。具体的には、住宅やビルにおいて、太陽光発電や燃料電池などにより自家発電し、蓄電池によって電気を保存する事で、昼夜や天候を問わず電気を使用できるようにする。
電力系統の双方向化
電力の需要側が供給力と調整力の一部を持つようにして、他地域の被災時の電力融通や自地域の被災時の発電設備の停止等、供給側の供給力が不足した際に需要側から電力を供給する。例として自動車から住宅へ電力を供給するV2Hがある。
AI・IoTによる送電線網の管理
需要家の電力需要に関するビッグデータおよび提供側の発電量に関するビッグデータをIoTで収集、AIで分析する事で、発電所の稼働条件やVPP(Virtual Power Plant:自家発電事業者が、余った電力を電力会社側へ流す事)を含めた電力供給の最適化を行う。
解決策による波及効果と懸念事項
解決策による波及効果
再エネ電源を有効活用する事で自家発電が容易になる。電力系統を供給側から需要側への一方向から、需要側も供給側へ電気を流すことができるように双方向へ転換する事で、非常時の電力融通を近隣地域で行うことができるようになる。
解決策により新たに生じる懸念事項
レジリエンス強化の核となる部分に、再エネ電源の普及がある。現在、住宅やビルを新築する際には太陽光パネルの設置を義務付ける等の普及策を進めているが、新築時に限定すると膨大な期間を要し、レジリエンスの確保までに時間がかかってしまう事が考えられる。
懸念事項の対策
既存の建物にも設置可能なレトロフィット型の製品の普及を行う。例えば燃料電池では、既存の給湯器に後付けできるコジェネレーションシステムが実用化されており、これを使用する事でガスを使った発電を行う事ができるようになる。