【技術士キーワード学習】Ⅰ:持続可能な社会の実現(R1-1-2)
原理原則基礎技術、現状、あるべき姿の整理
SDGsの17のゴール:
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロにしよう
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等を減らそう
- 住みやすい街づくりを
- つくる責任つかう責任を
- 気候変動に具体的な対策を
- 水の豊かさと海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な社会を実現するためには、利便性と環境等をトレードオフにするのではなく、これらを両立することが必要である。
モビリティ分野から機械機器の例として自動車を例に挙げ、持続可能な社会を実現する手段について述べる。
課題と問題点(課題を遂行すべき解決項目)
地球温暖化への対応
環境:運輸部門における二酸化炭素排出量 – 国土交通省 (mlit.go.jp)
気候変動の要因のひとつとして、自動車のから排出されるCO2が挙げられる。自動車は国内のCO2排出量の約15パーセント程度を占めており、CO2排出量を削減することが必要である。
カーボンニュートラルの観点から、地球温暖化への対応として、自動車から排出されるCO2を脱炭素化することが課題である。
レアメタルの枯渇防止に向けた対応
EVにはリチウムやネオジムなどが使用されており、ガソリン車にはパラジウムや白金などが触媒と使用されている。
これらは鉄等のベースメタルと比較して希少性が非常に高いレアメタルであり、使用量が増えると消費が加速し、枯渇することが考えられる。
したがって資源活用の観点から、これらのレアメタルの新規使用を削減し、枯渇を防ぐことが課題である。
働きがいと経済成長の両立
我が国では2019年から働き方改革が始まっており、長時間労働を是正することが求められている。
労働生産性の観点から、従業員一人当たりの業務効率を向上し、長時間労働を前提とせず、付加価値を向上することが課題である。
最重要課題について
我が国では、2016年のパリ協定において、2030年までの二酸化炭素排出量2013年比46%削減を宣言している。その中でも、自動車のCO2排出量は全体の15%程度を占めていることから、改善の効果が大きいと判断し、「地球温暖化への対応」を最重要課題と考える。
最重要課題の解決策
自動車の動力に使用する燃料を化石燃料由来のガソリンや軽油等から転換し、走行時のCO2排出を削減する。
EVへの転換
動力をエンジンから転換した、EVを普及させる。
これによりガソリンや軽油等の燃焼が必要なくなるため、走行時のCO2排出を削減する。
また、EVの電源として再生可能エネルギーや原子力を用いた電気を使用することで、発電時のCO2排出も同時に削減する。
水素自動車への転換
水素を燃料とした自動車を普及させる。
水素燃料電池車(FCV)では、水素と酸素を用いて発電し走行するため、走行時に化石燃料の燃焼が不要となり、走行時のCO2が排出されない。
水素エンジン車では、水素を燃焼して動力を得る。水素を燃焼すると発生するのは水蒸気であるため、CO2が排出されない。
また、この水素を再生可能エネルギー由来のグリーン水素や、原子力発電由来のイエロー水素等を使用することで、燃料のカーボンニュートラルを達成する。
合成燃料車の普及
大気中のCO2や燃料の燃焼中に発生するCO2を吸収し、水素を反応させることでメタンを生成し、このメタンを燃料としてエンジンを動かすことで、従来のエンジン技術を活かす。
回収したCO2から燃料を合成するため、CO2収支としては実質ゼロとなる。
HV技術との組み合わせ
合成燃料車や水素エンジン車に従来のハイブリッド技術を組み合わせて、燃費を向上する。
これにより水素や合成燃料の自動車への需要を減らし、他の分野にも燃料を使用できるようにする。
技術効果と成果
上記解決策を実行することで、自動車走行時のCO2排出を削減することができる。
我が国のCO2排出の9割以上が燃料の燃焼時であるため、自動車走行時のCO2排出を削減することで、カーボンニュートラルに向けて大きく貢献することができる。
懸念事項
現在、自動車の走行時のCO2排出を削減するための主要な方法としてEVシフトが行われているが、EVに使用するバッテリーは5年程度で劣化するため、大量廃棄による環境汚染が懸念される。
その対策
EVに使用するバッテリーを再利用することで対応する。
自動車用としての役割を終えたバッテリーのセルを交換するなどして再生し、建物等の定置蓄電池として再利用する。
これにより、環境汚染を回避しながら家庭部門や業務部門におけるZEH、ZEB化を後押しする。
現時点の技術評価と将来動向
EVはコストの大半がバッテリーとなっており、現状ではEVの普及は補助金頼みとなっている。
また、充電待ちによる交通渋滞も懸念されることから、代替案として中国ではPHV化、ドイツでは水素自動車の研究に力を入れている。